緊迫するイラン情勢、投資に手堅い銘柄は?

総合評価は INPEX が★★★★☆、川崎重工業が★★★☆☆、三菱重工業が★★★☆☆。 ひと言でいえば、今の局面で最も手堅いのはINPEXです。原油高の直接恩恵、PBR1倍前後、配当と自社株買いの下支えがそろっているためです。一方、防衛株の川崎重工業と三菱重工業は中長期の追い風こそ強いものの、足元では株価がかなり織り込みを進めており、「強いテーマ株」ではあっても「守りが固い銘柄」とは少し性格が違います。
本稿の業績数値は各社の直近IR資料、株価とバリュエーションは主に2026年3月13日終値ベース、外部環境は2026年3月14日朝までに確認できた公表情報を基に整理しています。以下は投資判断の材料整理であり、売買を断定するものではありません。
目次
まず押さえたい外部環境
事実
- IEAは2026年3月11日、中東戦争による供給混乱への対応として、加盟国で4億バレルの緊急備蓄放出を決定しました。
- IEAによると、ホルムズ海峡を通る原油・石油製品は2025年平均で日量2,000万バレル、世界の海上石油取引の約25%を占めます。
- Reuters配信では、Brent原油は3月9日に一時119.50ドルまで上昇し、3月12日には100ドル台を回復しました。
- 資源エネルギー庁によると、日本の原油輸入の中東依存度は2023年度94.7%です。
- Reuters配信では、3月12日の東京市場で日経平均とTOPIXは下落し、東証33業種では鉱業が上昇、川崎重工業は日経平均採用銘柄の上昇率上位に入りました。
見方
- 日本株全体では原油高はコスト増で逆風ですが、上流権益を持つ資源株には追い風です。
- 防衛株は「原油高メリット」ではなく、地政学リスク上昇で防衛需要が意識されることが買い材料です。
- つまり今回は、同じ中東リスク関連でも、INPEXは業績直結型、重工2社はテーマ連動型と分けて見るほうが判断しやすい局面です。
3銘柄の比較
| 銘柄 | 星評価 | 3月13日終値 | PER | PBR | ROE | 配当利回り | ひと言結論 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| INPEX(1605) | ★★★★☆ | 4,383円 | 約12.7倍 | 約0.99倍 | 約8.46% | 約2.51% | 原油高の恩恵が最も分かりやすく、還元も厚い |
| 川崎重工業(7012) | ★★★☆☆ | 16,420円 | 約25.5倍 | 約3.19倍 | 13%台の目安 | 約0.96% | 防衛テーマは強いが、値動きと割高感に注意 |
| 三菱重工業(7011) | ★★★☆☆ | 4,745円 | 約51.6倍 | 約5.77倍 | 10%台の目安 | 約0.52% | 受注は強いが、手堅さより成長期待の色が濃い |
各銘柄の評価
INPEX(1605)
事実
- 2025年12月期の売上収益は2兆113億円、親会社株主に帰属する当期利益は3,938億円でした。
- 2026年12月期会社計画は、売上収益1兆8,930億円、親会社株主利益3,300億円です。
- 2026年の年間配当は108円を予定し、総還元性向50%以上を維持する方針です。
- 2025年は1,000億円の自己株取得を実施し、年間の総還元性向は55.4%でした。
- 3月13日終値ベースで、PER約12.7倍、PBR約0.99倍、ROE約8.46%です。
見方
- 今回のテーマに最も素直に反応しやすいのはINPEXです。原油・LNG価格の上振れがそのまま利益期待につながりやすいためです。
- しかも、原油高メリットだけでなく、PBR1倍近辺と配当2%台半ば、さらに自社株買いの実績があるため、テーマ株の中では下値の考え方を持ちやすい銘柄です。
- 弱点は、会社計画自体は2026年減益見通しであることです。情勢が落ち着いて原油価格が反落すれば、上昇材料も一気に薄れます。
川崎重工業(7012)
事実
- 2026年3月期第3四半期累計の売上収益は1兆5,614億円、事業利益は824億円、親会社株主に帰属する四半期利益は658億円でした。
- 通期計画は売上収益2兆3,400億円、事業利益1,450億円、親会社株主利益900億円です。
- 2026年2月9日に、株主還元方針を連結配当性向30%基準からDOE4%目安へ変更し、期末配当予想を91円へ増額しました。年間配当予想は166円です。
- 同日、1株を5株に分割する方針も公表し、効力発生日は2026年4月1日です。
- 3月13日時点の指標目安は、PER約25.5倍、PBR約3.19倍です。
見方
- 防衛、航空宇宙、船舶海洋のテーマを取り込みやすく、地政学リスク局面では資金が向かいやすい銘柄です。
- 増配と株式分割は需給面で追い風です。防衛関連としては、三菱重工業よりもまだ相対的に織り込みが軽いと見る余地があります。
- ただし、PER20倍台半ば、PBR3倍超は、手堅さというより成長期待込みの価格です。中東情勢の悪化が続かなければ、短期資金の巻き戻しで値幅が出やすい点は軽く見にくいです。
三菱重工業(7011)
事実
- 2025年度第3四半期累計の受注高は5兆291億円、売上収益は3兆3,269億円、事業利益は3,012億円、親会社株主利益は2,109億円でした。
- 通期計画は受注高6兆7,000億円、売上収益4兆8,000億円、事業利益4,100億円、親会社株主利益2,600億円です。
- 3月13日終値ベースで、PER約51.6倍、PBR約5.77倍、配当利回り約0.52%です。
- 株価はこの1年で約94%上昇しており、受注拡大と防衛期待をかなり先回りしてきました。
見方
- 事業の厚み、受注残、収益改善力では3社の中でも非常に強い部類です。防衛だけでなく、エネルギー、航空宇宙、インフラ更新まで材料が広い点も強みです。
- ただし、今回のテーマで問われているのは「最も強い銘柄」ではなく「手堅い銘柄」です。この観点では、PER50倍台、PBR5倍台後半は負担が重いです。
- 業績上方修正が続く限り買いが入りやすい一方、短期的には好材料が株価にかなり織り込まれており、押し目の深さには注意が必要です。
株価推移と需給の見方
事実
- 1年騰落率は、INPEXが約+123%、川崎重工業が約+99%、三菱重工業が約+94%です。
- INPEXの3月13日終値は4,383円で、52週高値4,417円に接近しています。
- 川崎重工業の52週高値は18,830円、3月13日終値は16,420円で、高値からは調整しています。
- 三菱重工業の52週高値は5,208円、3月13日終値は4,745円です。
見方
- INPEXは原油価格との連動が比較的分かりやすく、上昇理由を説明しやすい銘柄です。
- 重工2社は、業績だけでなくテーマ性と期待先行で動くため、ニュースへの反応が速く、反落も速いのが特徴です。
- 地政学リスクへの備えとして組むなら、今はINPEXを主軸にし、防衛株は比率を抑えて添える形のほうが整合的です。
強気材料と弱気材料
強気材料
- 原油価格が高止まりすれば、INPEXには最も直接的な追い風になります。
- IEAが過去最大規模の備蓄放出に動いたこと自体、供給不安の大きさを示しています。
- 川崎重工業と三菱重工業は、中東情勢に限らず、日本の防衛費増加や安全保障重視の流れが中期テーマとして残ります。
- 川崎重工業はDOE導入、増配、株式分割と、株主還元面の材料が増えました。
弱気材料
- 中東情勢が急速に緩和すれば、INPEXの原油高メリットは一気に薄れます。
- 川崎重工業と三菱重工業は、業績が良くても高い期待が先に乗っているため、決算通過後の利益確定売りが入りやすいです。
- 日本株全体では燃料高が景気や企業収益に逆風で、指数全体が崩れるとテーマ株も巻き込まれます。
- 重工2社は「防衛関連だから安全」というより、むしろ値動きの大きい人気株と見たほうが実態に近いです。
いま確認したいポイント
- Brent原油が100ドル前後を維持するのか、90ドル台へ戻るのか
- ホルムズ海峡を巡る供給不安が数日単位で収まるのか、数週間続くのか
- INPEXが次回決算でも108円配当と高い還元方針を維持できるか
- 川崎重工業と三菱重工業で、防衛関連受注や通期計画の上積みが続くか
まとめ
現時点で「手堅さ」を最優先するなら、最有力はINPEXです。原油高の恩恵が業績に結びつきやすく、PBR1倍前後、配当、自社株買い実績までそろっています。
一方、川崎重工業と三菱重工業は有力候補ではあるものの、どちらも本質的にはディフェンシブ株というより地政学リスクで買われやすい成長・テーマ株です。中東情勢の長期化に賭けるなら重工株、情勢悪化へのヘッジを優先するならINPEX、という整理が今は最もしやすいと見ます。
参照リンク
- IEA Member countries to carry out largest ever oil stock release amid market disruptions from Middle East conflict
- 資源エネルギー庁 第1章 第3節 一次エネルギーの動向
- Reuters配信 Oil soars 25%, gold drops as Iran war jolts global commodity markets
- Reuters配信 Japan’s Nikkei falls as oil climbs on prolonged Middle East conflict
- INPEX 2025年12月期 決算発表・決算説明会
- INPEX Financial Results for the year ended December 31, 2025
- INPEX Statistics & Valuation Metrics
- INPEX Stock Price & Overview
- 三菱重工 決算短信・決算説明会
- 三菱重工 Statistics & Valuation Metrics
- 三菱重工 Stock Price & Overview
- 川崎重工 IRカレンダー
- 川崎重工 2025年度第3四半期決算短信(連結)
- 川崎重工 株主還元方針の変更および期末配当予想の修正(増配)に関するお知らせ
- 川崎重工 株式分割および株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ
- 川崎重工 Statistics & Valuation Metrics
- 川崎重工 Stock Price & Overview
- 株予報Pro INPEX(1605) 配当情報
- 株予報Pro 三菱重工業(7011) 配当情報
