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介護賃上げとDXで注目したい日本株10選 事業者5社・省力化5社を比較

介護職員がタブレットや省力化機器を活用する高齢者施設の様子。

介護賃上げとDXで注目したい日本株10選 事業者5社・省力化5社を比較

総合評価:★★★☆☆(中立・押し目監視)

結論から言えば、介護職員の賃上げ政策は介護事業者の利益を一律に押し上げる材料ではありません。 加算を着実に取得し、採用・定着率や稼働率を改善できる事業者と、加算要件にも関わるICT・生産性向上を支える企業を分けて見る必要があります。

本記事は2026年8月1日時点の公表資料と、原則として7月31日までに確認できた市場データを基にしています。投資判断は自己責任であり、掲載内容は将来の運用成果を保証するものではありません。

この記事で分かること

  • 2026年度の介護報酬改定が事業者の収益に届く経路
  • 介護事業者5社と省力化・DX関連5社の違い
  • 各銘柄の強気材料、弱気材料、監視したい価格帯
  • 短期・中期・長期で重視すべき指標
目次

賃上げ政策の核心は「加算率」より実行力

政策の恩恵を利益につなげるには、賃上げ原資を確保するだけでなく、離職と採用費を減らす必要があります。

厚生労働省によると、2026年度の介護報酬改定率はプラス2.03%です。介護従事者で月1万円、介護職員では定期昇給を含め最大月1万9,000円の賃上げが可能な水準とされています。

さらに同年6月から処遇改善加算が拡充されました。上位加算には、施設系サービスの生産性向上推進体制加算や、訪問・通所系サービスのケアプランデータ連携システム利用などが関係します。

ここから企業業績への波及経路は二つに分かれます。

  • 介護事業者:加算収入を賃金へ配分し、採用難や離職を緩和。稼働率を維持できれば増収につながる
  • 省力化企業:記録、請求、見守り、ベッド、移乗支援などの導入需要を取り込む

ただし、加算収入の多くは職員へ配分されます。食材費、光熱費、建築費も上がるため、報酬改定率だけを見て「増益」と判断するのは危険です。

ここがポイント: 介護事業者では「加算取得率・離職率・入居率」、省力化企業では「介護向け売上の比率・継続課金・導入後の定着率」を確認することが重要です。

介護関連10銘柄の比較一覧

安定性を重視するなら学研HDやフランスベッドHD、利益成長を狙うならチャーム・ケア、値幅を狙うならBCCやCYBERDYNEが候補になります。

価格は断定的な売買指示ではなく、2026年7月末までの株価、年初来レンジ、業績と決算日を踏まえた監視目安です。

銘柄区分評価向くスタイル購入監視ライン利益確定・撤退の目安
セントケアHD(2374)事業者★★★☆☆中長期直近高値を追わず、決算後の支持線形成を確認増収でも営業減益が続く場合は比率縮小
チャーム・ケア(6062)事業者★★★★☆中期1,300~1,350円1,500円接近、または入居率低下で見直し
ケア21(2373)事業者★★☆☆☆短期・回復待ち380~400円450円前後、400円割れ定着は撤退検討
ソラスト(6197)事業者★★★☆☆中期1,050~1,100円1,200円台、介護利益率悪化で見直し
学研HD(9470)事業者★★★★☆長期950~1,000円1,100円超、または有利子負債増加を警戒
エス・エム・エス(2175)人材・情報★★★☆☆中期2,150~2,250円2,600円接近、海外減損の再発で撤退検討
EMシステムズ(4820)介護DX★★★☆☆配当・長期520~550円620円前後、減益長期化なら見直し
フランスベッドHD(7840)福祉用具★★★★☆長期・配当1,200~1,250円1,390円付近、貸与事業の鈍化を警戒
CYBERDYNE(7779)介護ロボット★★☆☆☆短期・高リスク200~220円260円超、190円割れは撤退検討
BCC(7376)介護DX支援★★☆☆☆短期・小型成長急落後の900円台で下げ止まり確認1,100円前後、中間赤字拡大なら撤退検討

介護事業者5社――賃上げを稼働率改善へつなげられるか

事業者を見る際は、売上成長よりも人件費を吸収した後の営業利益率が重要です。

1.セントケア・ホールディング(2374)

訪問介護、訪問看護、住宅系サービスを幅広く展開します。直近公表された2026年3月期第3四半期累計では、売上高436億700万円と前年同期比2.9%増えた一方、営業利益は5.2%減少しました。

  • 強気材料:在宅サービスの基盤、自己資本比率の高さ、処遇改善による採用環境の緩和
  • 弱気材料:人材確保費用が先行し、増収が利益増へ直結していない
  • 確認指標:訪問件数、営業利益率、採用費、離職率

政策との距離は近いものの、評価は★★★☆☆。利益反転を確認してからでも遅くありません。

2.チャーム・ケア・コーポレーション(6062)

都市部の有料老人ホームが中心で、入居率と新設施設の立ち上がりが利益を左右します。7月31日の終値は1,357円、出来高は8万2,500株。8月6日に決算発表を予定しており、短期的には決算跨ぎの変動に注意が必要です。

  • 強気材料:高価格帯施設の運営力、入居率上昇時の利益感応度
  • 弱気材料:開設費、人件費、建築費の上昇
  • 確認指標:既存施設入居率、新設室数、1室当たり収入

10社の中では成長性を評価して★★★★☆としました。ただし、決算前に上値を追うより、1,300円台で需給を確認する局面です。

3.ケア21(2373)

訪問介護と施設介護を展開する一方、低い利益率と財務負担が評価を難しくしています。7月31日終値は408円、出来高は8,200株にとどまり、流動性にも注意が必要です。

  • 強気材料:賃上げ支援による採用難の緩和、事業再構築の進展余地
  • 弱気材料:利益回復の確度、借入負担、小型株特有の売買の薄さ
  • 確認指標:営業キャッシュフロー、施設別採算、有利子負債

評価は★★☆☆☆。400円近辺を維持し、四半期黒字が定着することが投資の前提です。

4.ソラスト(6197)

医療事務受託に加え、介護・保育を運営します。7月31日終値は1,112円、出来高14万1,000株でした。介護専業ではないため、医療関連事業の収益が全社業績を下支えできる点が特徴です。

  • 強気材料:複数事業による収益分散、介護拠点の規模
  • 弱気材料:買収後の統合負担、人件費上昇、介護事業の採算改善の遅れ
  • 確認指標:介護セグメント利益、のれん、稼働率

★★★☆☆とし、1,100円前後での下値の強さを確認したい銘柄です。

5.学研ホールディングス(9470)

学研ココファンを通じてサービス付き高齢者向け住宅や在宅介護を展開します。2026年9月期中間期は売上高1,048億8,000万円で前年同期比6.1%増、営業利益46億7,000万円で2.8%増でした。7月31日終値は1,017円。予想PER10.54倍、PBR0.79倍、予想配当利回り2.85%です。

  • 強気材料:医療福祉施設の増加、教育との事業分散、PBR1倍割れ
  • 弱気材料:有利子負債の増加、教育事業を含む複合企業ゆえ介護政策の寄与が薄まる
  • 確認指標:医療福祉部門の営業利益、施設数、負債倍率

割安性と分散効果から★★★★☆。8月7日の決算で医療福祉部門の増益継続を確認したいところです。

省力化・周辺企業5社――売上への寄与率を見極める

介護DXという看板より、継続課金や福祉用具貸与が実際の利益を生んでいるかが重要です。

6.エス・エム・エス(2175)

介護事業者向け経営支援「カイポケ」や人材サービスを展開します。2026年3月期は売上高647億3,500万円、営業利益67億8,700万円で増収増益でしたが、海外事業の減損で143億1,700万円の最終赤字となりました。

  • 強気材料:介護事業所の業務・採用・金融をつなぐ継続課金モデル
  • 弱気材料:予想PER約31倍、海外事業の減損、営業増益率の鈍化
  • 確認指標:カイポケ会員数、顧客単価、海外事業のキャッシュフロー

国内事業は魅力的ですが、割安とは言いにくく★★★☆☆です。

7.EMシステムズ(4820)

薬局・医科・介護向けシステムを提供します。7月31日終値は558円。予想PER17.61倍、PBR2.02倍、予想配当利回り4.12%、自己資本比率73.9%です。

一方、2026年12月期第1四半期は売上高50億3,900万円で24.9%減、営業利益2億1,600万円で85.9%減。電子処方箋などの導入需要の反動が出ました。

  • 強気材料:高い自己資本比率、4%台の予想配当利回り、介護システムの継続収入
  • 弱気材料:特需反動、利益減少、信用買い残の増加
  • 確認指標:課金ユーザー数、ストック売上比率、8月10日発表予定の決算

配当を受け取りながら回復を待つ銘柄として★★★☆☆です。

8.フランスベッドホールディングス(7840)

介護ベッドや福祉用具の販売・レンタルを手掛けます。7月中旬の株価は1,270円前後で、当時のPERは約13.8倍、PBRは約1.06倍。福祉用具貸与は、介護施設の新設だけに依存しない点が強みです。

  • 強気材料:レンタルによる継続収入、高齢化に伴う在宅需要
  • 弱気材料:仕入れ・物流費の上昇、制度上の貸与価格上限
  • 確認指標:メディカルサービス部門の利益率、レンタル資産回転率

急成長株ではありませんが、長期の安定枠として★★★★☆です。

9.CYBERDYNE(7779)

装着型サイボーグHALを医療・福祉分野へ展開します。7月28日時点では226円近辺で、年初来高値420円に対して大きく調整していました。予想PERは赤字のため算定できず、PBRは約1.20倍、実績ROEは0.39%です。

  • 強気材料:介護者の身体負担を軽減する技術、自己資本比率80%台
  • 弱気材料:利益の定着前でPER評価ができない、材料で株価が急変しやすい
  • 確認指標:製品・サービス売上、営業損益、継続利用台数

テーマ性は高いものの、政策関連だけで買う銘柄ではありません。評価は★★☆☆☆です。

10.BCC(7376)

介護施設へのICT機器導入支援や介護DX支援を行う小型株です。2026年9月期中間期は売上高9億2,300万円、営業損失8,100万円。M&A後の先行費用を含め、まだ利益面の検証が必要です。

  • 強気材料:補助金申請から導入定着まで支援できること、介護DX企業のグループ化
  • 弱気材料:赤字、小さい時価総額、株価と出来高の変動が大きい
  • 確認指標:ヘルスケア部門売上、粗利益、営業キャッシュフロー

成長が数字に表れる前の段階で、評価は★★☆☆☆。8月12日予定の第3四半期決算が次の分岐点です。

投資スタイル別の選び方

同じテーマでも、配当を待つ銘柄と決算で値幅を取る銘柄を混ぜないことが大切です。

短期

決算や政策ニュースによる値幅を狙うなら、チャーム・ケア、BCC、CYBERDYNEが候補です。ただし、小型株では出来高が細ると希望価格で売れない場合があります。決算前に購入するなら、損失許容額を先に決める必要があります。

中期

処遇改善加算が採用・定着率へ反映されるまで追うなら、セントケアHD、ソラスト、エス・エム・エスが中心です。四半期ごとに人件費率と営業利益率を並べ、売上だけが伸びて利益が残らない企業を外します。

長期

安定収入と財務を重視するなら、学研HD、EMシステムズ、フランスベッドHDが比較しやすい組み合わせです。配当利回りだけでなく、減配を避けられるキャッシュフローがあるかを確認します。

共通リスクと前提が崩れる条件

最大のリスクは、報酬増を物価・人件費の上昇が上回り、事業者にも省力化投資にも資金が残らないことです。

  • 加算の取得要件を満たせず、想定した収入を得られない
  • 賃上げ後も離職率が下がらず、採用費と派遣費が高止まりする
  • 食材、電力、賃料、建築費の上昇が報酬改定分を上回る
  • ICTを導入しても二重入力が残り、現場の労働時間が減らない
  • 補助金終了後に更新契約が続かず、省力化企業の売上が一過性で終わる
  • 小型株で政策期待が先行し、決算発表後に材料出尽くしとなる

次に確認したい三つの数字

8月の決算では、売上高より「利益率・稼働率・継続収入」を優先して確認します。

  1. チャーム・ケアと学研HDの施設入居率、既存施設の利益
  2. EMシステムズのストック売上と特需反動後の営業利益
  3. BCCのヘルスケア部門売上と赤字縮小の進み方

介護職員の賃上げは社会的に必要でも、それだけで株主利益が増えるとは限りません。加算を受け取る企業ではなく、加算を使って離職を減らし、少ない作業時間でサービス量を維持できる企業が中期的な勝者になります。次の決算では、その変化が人件費率と営業利益率に現れ始めたかを見極める局面です。

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