稼働資産で稼ぐ日本株10選 リース・建機・介護用品の回収力を比較
総合評価:★★★★☆(中期で注目)
結論から言えば、収益の安定性と割安感のバランスでは東京センチュリー、三菱HCキャピタル、九州リースサービスが有力候補です。成長性を重視するならパーク24、景気変動への耐性を求めるなら日本ケアサプライが選択肢になります。
ただし、同じ「貸して稼ぐ」企業でも中身は大きく異なります。航空機、建設機械、福祉用具では、稼働率を左右する需要も資産回収までの期間も同じではありません。
本記事は2026年8月21日の終値と、同日までに公表された決算・会社予想を基準にした比較・学習資料です。投資判断は自己責任であり、記載内容は将来の運用成果を保証するものではありません。
この記事で分かること
- 保有資産を貸し出して稼ぐ10社の事業構造
- PER、PBR、ROE、配当利回りから見た評価差
- 稼働率だけでは見抜けない資産回収のリスク
- 短期・中期・長期別の監視価格帯
レンタル収益を見るなら「稼働率×単価×回収期間」が核心
稼働率が高いだけでは、良いレンタル事業とは判断できません。 貸出単価から維持費、金利、減価償却費を差し引き、投資額を予定期間内に回収できるかが重要です。
基本的な見方は次のとおりです。
- 稼働率:保有する機械、車両、航空機などが収益を生んでいる割合
- 単価:1日、1カ月、契約期間当たりに受け取る料金
- 回収期間:資産取得額を営業キャッシュフローで取り戻すまでの期間
- 残存価値:契約終了後に中古売却などで回収できる価値
- 資金原価:借入金や社債による調達にかかる金利
リース会社では顧客の信用力や金利差、建機レンタルでは現場需要と機械の配置効率、福祉用具では高齢化需要と物流網が利益を左右します。
ここがポイント: 稼働率が上がっても、値下げで貸し出したり修繕費が増えたりすれば回収力は改善しません。稼働率と利益率、営業キャッシュフローをセットで確認する必要があります。
10銘柄の比較一覧
中期の総合力は東京センチュリー、割安・配当では芙蓉総合リースと九州リースサービス、収益性ではパーク24が目立ちます。
数値は2026年8月21日時点。PERと配当利回りは会社予想、PBRとROEは実績ベースです。
| 銘柄 | 株価 | PER | PBR | ROE | 配当利回り | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| オリックス(8591) | 6,115円 | 12.65倍 | 1.42倍 | 10.44% | 3.06% | ★★★★☆ |
| 三菱HCキャピタル(8593) | 1,395円 | 12.51倍 | 1.00倍 | 8.59% | 3.66% | ★★★★☆ |
| 東京センチュリー(8439) | 2,557円 | 10.16倍 | 1.08倍 | 10.35% | 3.52% | ★★★★★ |
| 芙蓉総合リース(8424) | 4,386円 | 8.24倍 | 0.77倍 | 4.41% | 3.92% | ★★★★☆ |
| リコーリース(8566) | 6,760円 | 17.51倍 | 0.86倍 | 5.39% | 3.79% | ★★★☆☆ |
| 九州リースサービス(8596) | 1,626円 | 8.76倍 | 0.80倍 | 8.95% | 3.81% | ★★★★☆ |
| ニシオHD(9699) | 4,620円 | 10.51倍 | 0.89倍 | 8.95% | 2.86% | ★★★★☆ |
| カナモト(9678) | 5,450円 | 14.61倍 | 1.22倍 | 7.64% | 2.02% | ★★★☆☆ |
| 日本ケアサプライ(2393) | 4,420円 | 29.86倍 | 3.82倍 | 12.51% | 1.67% | ★★★☆☆ |
| パーク24(4666) | 2,038円 | 7.91倍 | 3.15倍 | 18.06% | 3.19% | ★★★★☆ |
購入・売却ラインは売買指示ではなく、2026年の値動き、バリュエーション、決算日程を基にした監視レンジです。決算や相場急変後には前提を更新してください。
総合リース6社は資産の入れ替えと金利差を比べる
総合リースでは、資産残高の大きさよりも、調達金利を契約条件へ反映できる速さと売却益への依存度が重要です。
1. オリックス(8591)— 多角化による回収経路の多さ
評価:★★★★☆/中期・長期向き
オリックスは法人金融、リース、不動産、保険、環境エネルギー、事業投資を抱えます。単純なレンタル専業ではありませんが、貸出料、運営収入、資産売却という複数の回収経路を持つ点が強みです。
2027年3月期第1四半期の純利益は2,808億円で前年同期比161.8%増。ただし、持分法投資損益などレンタル収入以外の影響が大きく、四半期利益だけで安定性を判断できません。
- 強気材料:ROE10.44%、予想配当利回り3.06%。事業分散と資産売却力が下支え
- 弱気材料:投資損益や売却益で利益が振れやすい。年初来高値6,680円から調整中
- 購入監視:5,800~6,050円。PBR上昇後の調整と6,000円近辺の攻防を確認
- 売却・見直し:6,650~6,800円では上値余地を再計算。5,700円割れは上昇基調の崩れに注意
2. 三菱HCキャピタル(8593)— 配当と資産運用力を両立
評価:★★★★☆/中期・長期向き
航空、物流、環境エネルギーなど、専門性の高い資産を広く扱います。予想配当利回り3.66%、PBR1.00倍は長期保有の入口として見やすい水準です。
一方、2027年3月期第1四半期の純利益は316億円と前年同期比44.8%減。前年の決算期変更効果の反動や資産売却益の減少が響きました。通期予想1,600億円を維持できるかが焦点です。
- 強気材料:年間51円の予想配当、海外・再エネ資産の収益機会
- 弱気材料:航空機返却、金利上昇、下期に偏る売却益
- 購入監視:1,330~1,390円。PBR1倍近辺を基準に分割して観察
- 売却・見直し:1,500~1,550円では年初来高値と利回り低下を確認。1,300円割れは業績前提を再点検
3. 東京センチュリー(8439)— ROEと割安感のバランス
評価:★★★★★/中期・長期向き
東京センチュリーはオートモビリティ、航空機、環境インフラなどへ事業を広げています。ROE10.35%に対して予想PER10.16倍、PBR1.08倍であり、今回の10社では収益性と評価の釣り合いが良好です。
ただし、航空機や大型設備は取得額が大きく、中古価格や契約先の信用状況によって残存価値が変わります。
- 強気材料:2桁ROE、予想配当利回り3.52%、資産分散
- 弱気材料:航空市況、為替、海外金利の影響
- 購入監視:2,400~2,520円。PER10倍を下回る場面を優先
- 売却・見直し:2,750~2,850円で利益成長との釣り合いを再確認。2,350円割れは決算内容を点検
4. 芙蓉総合リース(8424)— 割安だがROE回復待ち
評価:★★★★☆/配当重視の長期向き
予想PER8.24倍、PBR0.77倍、配当利回り3.92%は割安感を示します。ただし、実績ROEは4.41%にとどまり、低PBRには資本効率への慎重な評価も含まれています。
不動産、エネルギー、BPOなどリース外収益を増やす戦略が、資産回転率とROEを改善できるかが重要です。
- 強気材料:低PER・低PBR、年間172円の予想配当
- 弱気材料:ROEの低さ、金利上昇時の利ざや圧迫
- 購入監視:4,150~4,350円。PBR0.8倍未満を一つの目安にする
- 売却・見直し:4,700~4,850円ではROE改善の進捗を確認。4,000円割れでは減益要因を再評価
5. リコーリース(8566)— 配当は魅力、利益回復が課題
評価:★★★☆☆/長期の配当重視向き
医療・介護、事務機器など小口で分散した契約基盤が特徴です。2027年3月期第1四半期は売上高873億円と5.9%増えた一方、営業利益は3.6%減、純利益は5.3%減でした。
年間256円への増配予定は支えですが、予想PER17.51倍に対してROEは5.39%。利益回復を確認せず配当だけで追うのは慎重であるべきです。
- 強気材料:予想配当利回り3.79%、小口分散型の顧客基盤
- 弱気材料:増収減益、ROEの低さ、単元投資額の大きさ
- 購入監視:6,200~6,550円。年初来安値5,740円との距離も確認
- 売却・見直し:6,850~7,000円では割高感を再点検。6,100円割れは通期利益を見直す
6. 九州リースサービス(8596)— 地域密着と低PBR
評価:★★★★☆/中期・長期向き
九州の設備投資や不動産需要を取り込む地域型リース会社です。2027年3月期第1四半期は売上高98億6,700万円、営業利益22億7,900万円となり、それぞれ前年同期比31.8%、54.5%増えました。
予想PER8.76倍、PBR0.80倍に対してROEは8.95%。低評価の修正余地がある半面、地域と不動産売却への依存は確認が必要です。
- 強気材料:第1四半期の最高益、配当利回り3.81%、PBR1倍未満
- 弱気材料:九州経済への地域集中、信用買い残の偏り
- 購入監視:1,500~1,580円。急騰後の押し目を待つ
- 売却・見直し:1,680~1,750円では年初来高値突破の持続性を確認。1,450円割れは利益進捗を再点検
現物レンタル4社は稼働率と更新投資を重視する
建機、福祉用具、車両では、稼働率の改善が売上へ直結しやすい一方、修繕・更新投資を止めると競争力が落ちます。
7. ニシオホールディングス(9699)— 建機レンタルの総合力
評価:★★★★☆/中期向き
建設機械だけでなく、高所作業機、イベント設備、測量・通信機器まで扱います。建設会社は繁忙期だけ機械を借りることで固定費を抑えられるため、人手不足や工期短縮がレンタル需要を支えます。
予想PER10.51倍、PBR0.89倍、ROE8.95%で、資本効率と割安感のバランスは良好です。
- 強気材料:全国の配置網、低PBR、建設現場の省人化需要
- 弱気材料:機械購入費と修繕費、公共工事・建設投資の変動
- 購入監視:4,300~4,500円。9月期決算をまたぐ場合は投資額を抑える
- 売却・見直し:4,850~5,000円では増益余地を再計算。4,200円割れは稼働率と単価を確認
8. カナモト(9678)— インフラ更新を支える建機網
評価:★★★☆☆/中期向き
北海道を基盤に全国へ展開する建機レンタル大手です。災害復旧やインフラ更新は需要の支えになりますが、地域ごとの機械配置が外れると輸送費と遊休資産が増えます。
株価は年初来上昇後の水準にあり、予想PER14.61倍、PBR1.22倍。ニシオHDより評価が高いため、2026年9月4日予定の決算で利益成長を確かめたい局面です。
- 強気材料:インフラ老朽化対策、災害復旧、広域ネットワーク
- 弱気材料:更新投資負担、建設需要の循環、決算前の値動き
- 購入監視:5,000~5,250円。決算後に業績予想を維持できることが前提
- 売却・見直し:5,700~5,900円ではPER上昇を警戒。4,900円割れは決算の下振れを確認
9. 日本ケアサプライ(2393)— 景気に左右されにくい福祉用具
評価:★★★☆☆/長期成長向き
介護事業者へベッド、車いすなどを貸し出す福祉用具レンタル卸です。高齢化という長期需要があり、建機より景気変動を受けにくいのが強みです。自己資本比率67.1%、ROE12.51%も際立ちます。
問題は価格です。予想PER29.86倍、PBR3.82倍まで評価されており、安定性の多くが株価へ織り込まれています。
- 強気材料:高齢化需要、高ROE、厚い自己資本
- 弱気材料:割高なバリュエーション、介護報酬改定、物流・洗浄コスト
- 購入監視:3,900~4,150円。PER低下を待って段階的に観察
- 売却・見直し:4,600~4,800円では成長率との釣り合いを確認。3,800円割れは制度変更の有無を点検
10. パーク24(4666)— 駐車場とカーシェアの高回転モデル
評価:★★★★☆/短期・中期向き
時間貸し駐車場とカーシェアは、土地や車両を細かな時間単位で繰り返し稼働させる事業です。予約データ、会員基盤、拠点密度が高まるほど車両配置を効率化できます。
2026年10月期中間期は売上高2,022億7,500万円、営業利益172億9,500万円で前年同期比4.6%、9.6%増。通期予想と年間配当も上方修正されました。ROE18.06%は10社で最高です。
- 強気材料:高ROE、業績上方修正、年間65円への増配
- 弱気材料:PBR3.15倍、車両取得費、事故・修繕費、海外事業再編の反動
- 購入監視:1,900~2,000円。8月31日予定の決算前後は値幅拡大に注意
- 売却・見直し:2,200~2,330円では年初来高値を意識。1,850円割れは国内稼働と会員動向を確認
投資スタイル別の選び方
短期は決算と稼働率、中期は利益回収、長期は資産の陳腐化と配当余力を重視します。
短期向き
- パーク24:8月31日予定の決算とカーシェアの利用動向
- カナモト:9月4日予定の決算が株価評価を左右
- 九州リースサービス:好決算後の高値圏で需給を確認
短期では決算前に一括購入せず、発表後の出来高と窓開けの方向を見て監視レンジを更新する方法が現実的です。
中期向き
- 東京センチュリー:ROEとバリュエーションの均衡
- 三菱HCキャピタル:下期の資産売却と通期計画の進捗
- ニシオHD:建機稼働率、レンタル単価、更新投資の回収
中期では1回の四半期利益より、営業資産残高に対して利益とキャッシュフローがどれだけ増えたかを追います。
長期向き
- 芙蓉総合リース、リコーリース:配当を受けながらROE改善を待つ
- オリックス:複数事業による回収経路を評価
- 日本ケアサプライ:高齢化需要を重視するが、購入価格には慎重さが必要
長期保有では増配実績だけでなく、資産更新後もフリーキャッシュフローを残せるかを確認してください。
稼働率比較で見落としやすい4つのリスク
共通する最大のリスクは、資産を借金で増やした後に稼働率と単価が同時に下がることです。
1. 金利上昇
リース料が固定でも調達金利が上がれば利ざやは縮小します。契約更新まで価格転嫁できない企業ほど影響が遅れて表れます。
2. 残存価値の低下
航空機、建機、車両の中古価格が想定を下回ると、契約期間中に利益が出ても最終的な回収額が不足します。売却益が大きい年度は、本業収益と分けて確認すべきです。
3. 稼働率の定義がそろわない
企業によって、台数、金額、日数など算定基準が異なります。全社が同じ形式で稼働率を開示しているわけでもありません。そのため、単純な数字の横比較より次の変化を追う方が有効です。
- レンタル・リース収入の伸び
- 減価償却費と修繕費の増減
- 営業資産残高に対する利益率
- 営業キャッシュフローと設備投資額
- 中古資産の売却損益
4. 需要集中
建機は公共工事や災害復旧、福祉用具は介護制度、航空機は旅客需要に左右されます。異なる需要源を持つ銘柄を組み合わせることが、テーマ内のリスク分散になります。
次の決算で確認したい分岐点
次の焦点は、売上の増加が資産効率とキャッシュフローの改善を伴うかです。
- パーク24は8月31日予定の決算で、国内駐車場とカーシェアの伸びを確認
- カナモトは9月4日予定の決算で、建機稼働と更新投資負担を確認
- 三菱HCキャピタルは、下期偏重の資産売却計画が予定どおり進むかを追う
- 芙蓉総合リースとリコーリースは、低いROEが改善へ向かうかを見る
- 日本ケアサプライは、利益成長が高いPERとPBRを正当化できるかを点検する
レンタル株を「安定収益」と一括りにせず、稼働率、単価、資金原価、残存価値の4点を決算ごとに更新することが実践的です。次の立会日では、まず決算を控えるパーク24とカナモトの出来高、そして低PBRリース各社に資金が移るかを確認したいところです。
