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工場が動く限り減っていく――潤滑油・特殊油剤関連の日本株10選

金属加工機へ工業用潤滑油が供給される製造現場。

工場が動く限り減っていく――潤滑油・特殊油剤関連の日本株10選

テーマ評価:★★★★☆(4/5)

工業用潤滑油や金属加工油剤は、機械の摩耗を抑え、切削・圧延・成形・洗浄などの工程を安定させる消耗品です。設備投資が一巡しても、工場が稼働すれば交換・補充需要が続く点に、このテーマの強みがあります。

一方、10社を同じ「潤滑油株」として扱うのは危険です。専業に近いユシロやMORESCOは数量と製品構成が業績に直結しやすく、ENEOSや出光興産では潤滑油が巨大なエネルギー事業の一部にとどまります。純粋度を優先するなら専業・中堅、流動性や株主還元を重視するなら大手という使い分けが必要です。

本稿は2026年8月22日時点の公開情報と、原則として2026年8月21日終値を基準にした比較・学習資料です。投資判断は自己責任で行ってください。掲載内容は将来の運用成果を保証するものではありません。

この記事で分かること

  • 工業用潤滑油・特殊油剤の需要が設備投資だけでは決まらない理由
  • 専業メーカー、総合化学、石油元売りで異なる利益の出方
  • 10銘柄のPER・PBR・ROE、株価位置、向く投資期間
  • 押し目を待つ水準と、利益確定・見直しを考える水準
目次

注目すべきは設備の台数より「稼働時間」

このテーマの核心は、製造設備の新設だけでなく、既存設備の稼働に伴って需要が繰り返されることです。

工作機械では切削油や研削油、鉄鋼・非鉄では圧延油、自動車部品では離型剤や熱処理油、油圧設備では作動油が使われます。顧客がいったん油剤を採用すると、品質管理や設備条件を再調整する負担があるため、価格だけで簡単に切り替えにくい製品もあります。

数量だけでなく配合技術が利益を左右する

汎用品は原油・ベースオイル・添加剤の価格変動を受けやすく、値上げが遅れれば利幅が縮みます。対して、顧客の工程に合わせた特殊油剤は、次の価値を提供できます。

  • 工具寿命を延ばす
  • 加工不良や設備停止を減らす
  • 洗浄工程を短縮する
  • 使用量や廃液処理費を抑える
  • EV部品や電子材料など新工程に対応する

つまり、見るべき数字は売上高だけではありません。営業利益率、研究開発費、海外比率、顧客業界の構成、原料高を価格へ反映できたかが重要です。

今回の地合いでは決算の選別色が強い

2026年8月までの決算では、原料価格の一服、価格改定、高付加価値品の伸びが追い風になった企業がある一方、中国を含むアジアの生産停滞や石油化学製品の供給過剰は残っています。

同じテーマでも株価の反応は分かれました。MORESCOは2027年2月期第1四半期の営業利益が前年同期比で倍増し、ハリマ化成グループも第1四半期に大幅増益を確保。三洋化成工業は収益改善が評価され、8月に年初来高値圏まで上昇しました。

一方、松本油脂製薬や東邦化学工業のように売買高が少ない銘柄は、好業績でも株価へ織り込まれるまで時間がかかります。これは割安さの源泉であると同時に、売りたいときに売りにくいリスクでもあります。

10銘柄の比較一覧

結論を先に示すと、テーマへの近さと業績の勢いを両立する中心候補はユシロとMORESCO、割安・財務重視なら松本油脂製薬、流動性と分散を優先するならENEOSやADEKAです。

銘柄評価主な特徴向く期間監視する購入レンジ上値・見直しレンジ
ユシロ(5013)★★★★☆金属加工油剤の専業色中長期2,800~3,000円3,500~3,600円
MORESCO(5018)★★★★☆特殊潤滑油とホットメルト中期2,050~2,200円2,350~2,450円
松本油脂製薬(4365)★★★★☆繊維油剤・界面活性剤、厚い財務長期19,500~20,500円22,000円前後
三洋化成工業(4471)★★★☆☆界面活性剤・機能化学品中期5,700~6,100円6,500~6,800円
ADEKA(4401)★★★★☆潤滑油添加剤と半導体材料中長期4,150~4,450円5,000~5,150円
東邦化学工業(4409)★★★☆☆界面活性剤・特殊化学品長期730~760円810~850円
ハリマ化成グループ(4410)★★★☆☆ロジン系化学品・はんだ材料中期1,050~1,120円1,200~1,250円
出光興産(5019)★★★☆☆高機能材に潤滑油を保有短中期1,280~1,340円1,500~1,600円
ENEOS HD(5020)★★★☆☆総合エネルギー・潤滑油大手中長期1,230~1,290円1,450~1,550円
コスモエネルギーHD(5021)★★★☆☆石油製品と株主還元中期3,850~4,100円4,800~5,000円

購入レンジは支持線だけでなく、予想PER・PBR、直近決算後の値動き、年初来高安、流動性を踏まえた監視水準です。上値レンジは一律の売却指示ではなく、業績進捗を再確認する目安としてください。

指標を読む前に押さえたい3点

数値は便利ですが、事業構成が違う企業をPERだけで並べると判断を誤ります。

  • PER:株価が予想1株利益の何倍かを示す。資源価格や在庫評価で利益が振れる石油元売りでは、単年度PERが低くても持続性を確認する
  • PBR:株価が1株純資産の何倍かを示す。0.7倍でもROEが低ければ、資産を利益に変えられていない可能性がある
  • ROE:自己資本に対して純利益をどれだけ生んだかを示す。特別利益で一時的に上昇する場合があるため、営業利益の推移も併読する

以下のPERは原則として会社予想、PBRとROEは実績値です。決算期や会計処理が異なるため、小数点以下の差よりも「利益成長と評価倍率の釣り合い」を見ます。

各銘柄の業績・値動き・投資シナリオ

ここからは、テーマへの近さが高い企業から順に、強気材料と弱気材料を分けて確認します。

1.ユシロ(5013)――金属加工油剤を正面から買う銘柄

評価:★★★★☆/中長期向き

ユシロは自動車や機械の製造工程で使われる金属加工油剤が中心です。テーマ純粋度は10社の中でも高く、国内だけでなく米州・アジア・中国の生産動向が数量に直結します。

2026年8月21日の株価は3,040円。予想PERは10.12倍、PBRは0.81倍、実績ROEは10.50%、自己資本比率は73.5%です。PBR1倍割れながらROEが2桁に乗る組み合わせは魅力があります。

強気材料

  • 金属加工油剤は顧客工程への適合が必要で、採用後の継続性を期待しやすい
  • 自己資本比率が高く、景気後退時にも研究開発や海外展開を続けやすい
  • 2026年7月の2,730円から3,000円台へ戻し、下値確認後の回復が見える

弱気材料

  • 自動車生産、とくに海外拠点の稼働率低下が数量へ響く
  • 原料高を価格へ転嫁できなければ利益率が低下する
  • 2027年3月期の配当予想が比較時点で未定で、還元利回りを評価しにくい

2,800~3,000円はPBR0.8倍前後を意識できる押し目候補です。3,500~3,600円では年初来高値3,585円へ接近するため、海外数量と利益率の伸びが伴うかを確認したいところです。

2.MORESCO(5018)――増益の勢いが最も見えやすい

評価:★★★★☆/中期向き

MORESCOは特殊潤滑油、合成油、ホットメルト接着剤などを展開します。ダイカスト用離型剤や難燃性作動液など、特定工程に入り込む製品を持つ点が特徴です。

8月21日終値は2,255円。予想PER13.35倍、PBR0.86倍、実績ROE6.75%、予想配当利回り2.44%でした。2027年2月期第1四半期は売上高93億600万円、営業利益10億7,100万円。前年同期比ではそれぞれ9.3%増、106.1%増です。

強気材料

  • 利益の伸びが売上の伸びを大幅に上回り、採算改善が明確
  • 特殊油剤は顧客ごとの技術対応が参入障壁になる
  • 年初来安値1,525円から大きく切り返し、業績改善が株価へ反映されている

弱気材料

  • 8月21日の出来高は1万8,100株で、大型株ほど機動的に売買できない
  • ROEはまだ7%未満で、PBR1倍回復には利益成長の継続が必要
  • 7月の年初来高値2,381円が近く、好決算を相当程度織り込んだ可能性がある

2,050~2,200円への調整なら予想PER12倍台を意識できます。2,400円を明確に超えるには、第2四半期以降も数量増と採算改善が続くことが条件です。

3.松本油脂製薬(4365)――低PBRと財務余力を長く持つ

評価:★★★★☆/長期向き

松本油脂製薬は繊維用油剤、界面活性剤、熱膨張性マイクロカプセルなどを手掛けます。名称に「製薬」とありますが、投資上の中心は機能性化学品です。

8月21日近辺の株価は2万520円、予想PERは約8.8倍、PBRは約0.65倍。予想配当利回りは2%台前半です。低い評価倍率に加え、厚い純資産が下支えになります。

強気材料

  • PERとPBRの両方が低く、利益が維持されれば割安感が残る
  • 特殊な配合・製造ノウハウを必要とする製品が多い
  • 財務余力が大きく、原料高や需要減速への耐性がある

弱気材料

  • 売買高が数百株にとどまる日もあり、流動性リスクが非常に大きい
  • 自己株式の比率が高く、資本政策の進展が評価を左右する
  • 低PBRが長期間続いており、割安という理由だけでは株価上昇の時期を読めない

19,500~20,500円は純資産価値を意識した長期の監視帯です。年初来高値2万2,000円付近では、増配、自社株消却、成長投資など資本効率を上げる具体策が出ているかを確認します。

4.三洋化成工業(4471)――構造改革を評価する局面

評価:★★★☆☆/中期向き

三洋化成工業は界面活性剤、潤滑油添加剤、ウレタン関連材料などを幅広く扱います。潤滑油専業ではなく、事業ポートフォリオ改革の成否を買う銘柄です。

8月21日終値は6,360円。予想PER12.79倍、PBR0.87倍、実績ROE10.61%、予想配当利回り3.14%、自己資本比率81.4%でした。株価は7月29日の4,710円から急回復し、8月18日には6,490円の年初来高値を付けています。

強気材料

  • 高い自己資本比率と200円の予想年間配当
  • 不採算事業の整理後、資本効率が改善
  • 8月21日の出来高は13万300株と、中堅化学株として一定の流動性がある

弱気材料

  • 中国の供給過剰と安価品の流入が化学品市況を圧迫する
  • ROE上昇には税効果など一時要因が含まれ得る
  • 短期間で上昇しており、決算が期待未満なら値幅調整が大きくなりやすい

5,700~6,100円までの調整を待てば、急騰後の高値づかみを避けやすくなります。6,500円超では営業利益の継続改善が株価上昇に追いついているかが焦点です。

5.ADEKA(4401)――油剤だけに頼らない成長力

評価:★★★★☆/中長期向き

ADEKAは潤滑油添加剤、樹脂添加剤、半導体材料、食品などを展開します。テーマ純粋度は中程度ですが、複数の成長源を持つため、工業用油剤需要が弱い局面でも全社業績を支えられます。

8月21日の株価は4,572円。予想PER13.90倍、PBR1.38倍、実績ROE9.13%、予想配当利回り2.89%です。2027年3月期第1四半期は売上高1,170億円、営業利益156億円となり、前年同期比で15.2%増収、42.7%営業増益でした。

強気材料

  • 第1四半期の利益成長が強い
  • 潤滑油添加剤と半導体材料を併せ持ち、需要源が分散している
  • 自己資本比率56.0%で財務と成長投資のバランスが取れている

弱気材料

  • PBRは10社の中で相対的に高く、好業績をある程度織り込む
  • 半導体や樹脂添加剤の変動が、油剤の安定需要を打ち消す場合がある
  • 年初来高値5,104円へ近づくほど、決算進捗への要求水準が上がる

4,150~4,450円は予想PER13倍前後を意識する監視帯。5,000円台では半導体材料の伸びと通期上方修正の有無が次の判断材料になります。

6.東邦化学工業(4409)――低評価だが流動性に注意

評価:★★★☆☆/長期向き

東邦化学工業は界面活性剤、樹脂、特殊溶剤などを供給します。潤滑・洗浄・乳化といった製造工程を支える一方、電子情報産業向け材料も業績を左右します。

8月21日の株価は779円。8月20日時点の予想PERは8.81倍、PBR0.65倍、実績ROE6.78%、予想配当利回りは約3.2%です。2027年3月期第1四半期売上高は前年同期比13.2%増の148億円でした。

強気材料

  • PER9倍未満、PBR0.7倍未満で評価負担が軽い
  • 価格転嫁と電子情報産業向け製品が増収に寄与
  • 株価は年初来安値718円に近い水準を脱しつつある

弱気材料

  • 自己資本比率33.9%で、専業各社より財務余力が小さい
  • 通常の出来高が数千株にとどまり、材料発表時に価格が飛びやすい
  • ROEが7%弱のままではPBRの持続的な切り上がりを期待しにくい

730~760円では悪材料を織り込む余地が比較的大きくなります。810~850円へ上昇した場合は、増収が営業利益とキャッシュフローへ結び付いたかを確認すべきです。

7.ハリマ化成グループ(4410)――増益と事業再建を追う

評価:★★★☆☆/中期向き

ハリマ化成グループは松由来のロジンを原料に、樹脂化成品、製紙用薬品、電子材料などを展開します。典型的な潤滑油会社ではありませんが、製造工程に使われる添加剤・機能材料という隣接領域を押さえています。

8月21日終値は1,166円。予想PER10.70倍、PBR0.68倍、実績ROE6.00%、予想配当利回り3.60%です。2027年3月期第1四半期は売上高287億円、営業利益13億円となり、前年同期比で11.5%増収、71.8%営業増益でした。

強気材料

  • 電子材料の黒字転換などで利益回復が進む
  • PBR0.7倍未満、配当利回り3%台で下値材料がある
  • 7月末の決算発表後、出来高を伴って1,000円台前半から上昇した

弱気材料

  • ローター事業など海外市況の影響を受ける部門がある
  • ROE6%では資本コストを十分に上回れない可能性がある
  • 年初来高値1,208円が近く、短期的には戻り売りが出やすい

1,050~1,120円は決算後の上昇を一部吐き出す押し目候補です。1,200円台定着には、電子材料だけでなくローター事業の採算改善も必要になります。

8.出光興産(5019)――潤滑油の海外数量を確認する大型株

評価:★★★☆☆/短中期向き

出光興産は高機能材セグメントで潤滑油を展開します。2025年度の潤滑油販売数量は海外ライセンス先を含め106万7,000キロリットル、2026年度計画は109万キロリットルで2.2%増を見込みます。

8月21日終値は1,383.5円。予想PER22.34倍、PBR1.01倍、予想配当利回り2.60%です。8月14日終値1,306.5円から1週間で5.9%上昇し、決算後の資金流入が確認されました。

強気材料

  • 潤滑油を世界展開し、国内製造業だけに依存しない
  • 大型株で売買しやすく、テーマ専業株より流動性が高い
  • 高機能材には潤滑油以外の成長製品もある

弱気材料

  • 全社利益は原油価格、精製マージン、在庫評価の影響が大きい
  • 予想PERは今回の10社では高め
  • 潤滑油の数量計画は2.2%増で、急成長を前提にできない

1,280~1,340円は決算後の窓を意識した監視帯です。1,500円を超える局面では、燃料油の一時的な利益ではなく、高機能材の利益拡大が確認できるかを見ます。

9.ENEOSホールディングス(5020)――低PERと流動性を重視

評価:★★★☆☆/中長期向き

ENEOSは国内最大級の石油元売りで、工業用潤滑油、金属加工油、グリースなど幅広い製品群を持ちます。ただし、株価を動かす主因は石油製品、資源、素材、資本政策であり、潤滑油だけを目的に買う銘柄ではありません。

8月21日終値は1,331円。予想PER8.61倍、PBR0.95倍、予想配当利回り2.55%。出来高は802万600株で、今回の中では最も売買しやすい部類です。

強気材料

  • 低PERとPBR1倍未満が評価面の支え
  • 顧客業界と製品群が広く、特定の加工分野への依存が小さい
  • 大型株で分散投資や段階的な売買をしやすい

弱気材料

  • 原油、銅、精製マージン、為替など外部要因が多い
  • 潤滑油の伸びが良くても全社業績への寄与が見えにくい
  • 年初来高値1,552円からは調整したものの、短期反発後は追いかけにくい

1,230~1,290円を段階的に見るのが現実的です。1,450~1,550円では資源価格だけで上がっていないか、フリーキャッシュフローと還元方針を点検します。

10.コスモエネルギーホールディングス(5021)――還元と石油市況の組み合わせ

評価:★★★☆☆/中期向き

コスモエネルギーHDも工業用潤滑油を供給しますが、投資判断では石油事業、石油開発、再生可能エネルギー、株主還元の比重が大きくなります。

8月21日終値は4,266円。予想PER15.40倍、PBR1.00倍、実績ROE12.43%、予想配当利回り3.87%でした。2026年3月期の事業構成は石油が売上の86%を占めます。

強気材料

  • ROEが2桁で、予想配当利回りも3%台後半
  • 原油価格や石油化学市況が改善する局面では利益回復が速い
  • 6月の年初来安値3,451円から戻したが、3月高値5,034円には届いていない

弱気材料

  • 自己資本比率27.6%で、専業化学メーカーより財務レバレッジが高い
  • 潤滑油需要より原油・精製マージンが株価を動かしやすい
  • 市況回復で予想利益が上振れても、逆回転時にはPERが見かけ上急上昇する

3,850~4,100円は配当利回りと6月以降の支持帯を意識する水準です。4,800~5,000円では原油高による一時利益と、構造的な収益改善を分けて判断します。

投資期間別の使い分け

期間によって、重視すべき企業と撤退条件は変わります。

短期:決算後の出来高を追う

短期では出光興産、三洋化成工業、ハリマ化成グループが候補です。決算後に出来高が増えた銘柄は値幅が出やすい一方、上昇前の価格帯へ戻ればトレンドが崩れた可能性があります。

確認項目は次の3つです。

  • 決算発表日の安値を維持できるか
  • 上昇日に出来高が増え、下落日に減っているか
  • 年初来高値を抜く際に業績修正を伴うか

中期:価格転嫁と利益率の改善を見る

中期ではMORESCO、ADEKA、ハリマ化成グループが比較しやすい組み合わせです。売上高の増加だけでなく、営業利益がより速く伸びているかを追います。

原料安だけによる増益は、原料価格が再上昇すれば消えます。数量増、高付加価値品の構成比上昇、不採算事業の整理が重なっている企業を優先したいところです。

長期:顧客工程への定着と資本効率を買う

長期ではユシロ、松本油脂製薬、ENEOSが候補です。ただし狙いは異なります。

  • ユシロ:金属加工油剤の継続需要と海外展開
  • 松本油脂製薬:低評価、財務余力、特殊化学品の技術
  • ENEOS:流動性、事業分散、株主還元

長期保有では、PBR1倍割れだけを根拠にしないことが重要です。ROEが資本コストを下回り続けるなら、低PBRは修正されないまま残ります。

テーマ全体の共通リスク

最大のリスクは、消耗品だから需要が必ず安定すると思い込むことです。

製造業の稼働率低下

自動車、鉄鋼、工作機械、電子部品の生産が落ちれば、油剤の交換周期が延び、使用量も減ります。中国・欧州・北米に展開する企業では、日本の鉱工業生産だけを見ても不十分です。

原料価格と価格転嫁の時間差

ベースオイルや添加剤は原油価格、需給、為替の影響を受けます。原料が上昇してから顧客価格を改定するまでの数カ月間、利益率が圧迫される場合があります。

EV化による需要構造の変化

EVはエンジンオイル需要を減らす一方、モーター、減速機、電池冷却、軽量部品加工向けの新しい油剤需要を生みます。「EV化で油はすべて不要になる」「すべて追い風になる」のどちらも単純化しすぎです。各社が新用途を売上へ変えられるかを確認する必要があります。

小型株の流動性

松本油脂製薬、東邦化学工業、MORESCOでは、出来高が少ない日に成行注文を出すと想定外の価格で約定することがあります。指値を使い、一度に売買せず、保有額を抑えるのが基本です。

次の決算までに見るべき分岐点

次回の焦点は、増益が原料安だけで終わらず、数量と製品構成の改善へ広がるかです。

強気シナリオ

  • 自動車・工作機械の生産が回復し、金属加工油剤の数量が増える
  • 原料価格が安定し、過去の値上げ効果が利益率に残る
  • MORESCOやハリマ化成の高い増益率が第2四半期も続く
  • 低PBR企業が増配、自社株買い、政策保有株縮減を進める

弱気シナリオ

  • 中国・欧州の製造業が減速し、海外数量が落ち込む
  • 原油高と円安が同時進行し、価格転嫁が遅れる
  • 好決算銘柄で材料出尽くしの売りが広がる
  • 石油元売りの在庫評価益が反転し、全社利益が急減する

まず確認したいのは、2026年秋の第2四半期決算です。専業各社では販売数量と営業利益率、総合化学では事業別利益、石油元売りでは在庫影響を除いた利益を見る。この3点を分ければ、工場の消耗品需要を買っているのか、原油市況を買っているのかが明確になります。

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