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簿価を時価に直して探す「資産リッチな日本株」10選 修正純資産で割安度を比較

都市不動産や財務資料を使って資産株10社を比較するイメージ。

簿価を時価に直して探す「資産リッチな日本株」10選 修正純資産で割安度を比較

総合評価:★★★★☆(中期の監視候補)

結論から言えば、修正純資産で注目したいのは、単にPBRが低い会社ではありません。不動産や保有株式に含み益があり、それを売却・再開発・株主還元へつなげられる会社です。

2026年8月21日時点の株価と公開資料を基準に、三井不動産、東京建物、片倉工業、TBSホールディングスなど10社を比較しました。なかでも、資産価値と本業の収益力を両立しやすい東京建物、資産効率改善を追いやすいTBSホールディングス、PBR1倍近辺まで評価が進んだ片倉工業を優先候補とします。

本記事は公開情報を使った比較・学習材料です。投資判断は自己責任であり、記載内容は将来の運用成果を保証しません。株価・指標は原則として2026年8月21日終値基準です。

この記事で分かること

  • 修正純資産と修正PBRの考え方
  • PBRだけでは資産株を選べない理由
  • 不動産、政策保有株、事業価値をどう補正するか
  • 資産リッチな日本株10社の違いと監視価格
  • 含み益が株主価値に変わらないケース
目次

修正純資産では「売れる資産」と「残る負債」を見分ける

修正純資産の核心は、貸借対照表の金額を現在の経済価値へ置き直すことです。

一般的なPBRは、株価を1株当たり純資産で割って求めます。しかし、純資産の土台となる資産は原則として会計上の簿価です。何十年も前に取得した土地、値上がりした賃貸不動産、上場株式などの時価が十分に反映されていないことがあります。

修正純資産は、おおむね次の手順で試算します。

  1. 貸借対照表の自己資本を出発点にする
  2. 土地、賃貸等不動産、上場株式を時価へ置き換える
  3. 含み益に対する税負担を差し引く
  4. 退職給付、保証債務、除去費用など見落としやすい負担を確認する
  5. 非支配株主持分など、普通株主に帰属しない価値を除く

簡略式は次のとおりです。

修正純資産=自己資本+税引後の含み益-簿外・追加負担

さらに、時価総額を修正純資産で割れば「修正PBR」を試算できます。ただし、会社ごとに不動産鑑定の基準日や開示範囲が異なるため、機械的な横比較には限界があります。

資産別に掛け目を変える

すべての含み益を100%加算するのは危険です。換金までの時間とコストが違うためです。

  • 現預金:原則100%。ただし事業維持に必要な運転資金は除く
  • 上場株式:時価の70~80%程度を目安に、税金と価格変動を考慮
  • 賃貸不動産:鑑定価値の60~80%程度。売却費用、税金、借入金を差し引く
  • 自社利用の本社・工場:30~60%程度。売れば事業継続に支障が出る場合がある
  • ブランド、顧客基盤、映像権利:価値はあっても換金額の客観性が低く、保守的に扱う

ここがポイント: 修正純資産が大きいだけでは株価は動きません。資産を現金化し、成長投資、増配、自社株買い、負債返済へ回す道筋が必要です。

なぜ今、PBRの先まで確認するのか

低PBR企業が減った現在は、数字の低さより「資産を動かせるか」の差が重要です。

東京証券取引所の2026年4月資料によると、PBR1倍割れ企業の比率は、2022年7月から2026年3月にかけてプライム市場で50%から27%、スタンダード市場で63%から49%へ低下しました。

市場が一律に低PBR株を買う段階から、企業ごとの実行力を選別する段階へ移ったと読めます。

資産株を見る際は、次の三つを分けてください。

  • 価値の存在:簿価を上回る不動産や株式があるか
  • 価値の実現性:売却、再開発、持ち合い解消を実行できるか
  • 価値の帰属先:得た資金が普通株主へ還元されるか

含み益が大きくても、低採算事業の赤字補填に消えれば再評価は続きません。反対に、PBRがすでに1倍を超えていても、再開発で利益と純資産が増える会社なら中期的な投資対象になり得ます。

資産リッチな日本株10社の比較一覧

今回は低PBR順ではなく、資産の質、収益力、価値実現の道筋を合わせて順位付けしました。

監視レンジは売買指示ではありません。2026年8月21日までの値動き、年初来高安、PBR、決算イベントを基にしたシナリオです。

銘柄評価株価・PBR主な資産向く期間監視レンジ
東京建物(8804)★★★★☆3,411円・1.16倍都心賃貸不動産中長期買い3,200~3,350円/利益確定3,800~4,100円
TBS HD(9401)★★★★☆5,869円・0.56倍※8月19日不動産・保有株式中長期買い5,500~5,800円/利益確定6,300~6,600円
片倉工業(3001)★★★★☆2,953円・0.94倍商業施設・土地中期買い2,700~2,850円/利益確定3,150~3,300円
三井不動産(8801)★★★★☆1,498円・1.24倍都心不動産・再開発案件中長期買い1,430~1,480円/利益確定1,600~1,700円
京成電鉄(9009)★★★☆☆1,354.5円・1.16倍鉄道沿線資産・保有株式中期買い1,250~1,300円/利益確定1,400~1,450円
フジ・メディアHD(4676)★★★☆☆4,145円・1.09倍都市不動産・保有株式中期買い3,850~4,050円/利益確定4,500~4,700円
朝日放送GHD(9405)★★★☆☆833円・0.43倍土地・放送関連資産長期買い780~820円/利益確定900~950円
三菱地所(8802)★★★☆☆3,688円・1.63倍丸の内を中心とする賃貸不動産長期買い3,550~3,650円/利益確定4,000~4,300円
住友不動産(8830)★★★☆☆3,339円・1.20倍都心オフィス・マンション中長期買い3,230~3,320円/利益確定3,600~3,800円
トーア紡(3204)★★☆☆☆498円・0.30倍大阪圏の不動産長期・逆張り買い470~490円/利益確定530~560円

※PBRは実績、PERは会社予想を基本とします。TBSホールディングスは確認できた8月19日終値を使用。修正PBRそのものは開示基準の差が大きいため、各社の最新有価証券報告書にある賃貸等不動産の時価、保有株式、借入金を用いて再計算する必要があります。

10社を資産の「使い方」で読み解く

同じ資産株でも、再開発型、資産圧縮型、還元待ち型では株価が動く条件が違います。

1.東京建物(8804)— 資産価値と配当のバランス

おすすめ度:★★★★☆/中長期向き

8月21日終値は3,411円、予想PER10.89倍、PBR1.16倍。2026年12月期の予想配当は126円で、株価基準の予想利回りは約3.7%です。

中間期は営業収益が前年同期比6.9%減った一方、ビル事業の物件売却が寄与し、営業利益は17.1%増の399億円でした。含み益だけでなく、物件を回転させて利益へ変える力を確認できる点が重要です。

  • 強気材料:都心不動産、増益、増配、10倍台の予想PER
  • 弱気材料:有利子負債、金利上昇、住宅引き渡し時期による業績変動
  • 購入ライン:3,200~3,350円。PBR1.1倍前後と配当利回りの改善を待つ
  • 売却ライン:3,800~4,100円。年初来高値4,374円手前では評価の織り込みを再確認

2.TBSホールディングス(9401)— 低PBRでも問われる資本配分

おすすめ度:★★★★☆/中長期向き

確認できた8月19日終値は5,869円、予想PER18.92倍、PBR0.56倍です。放送会社として見るとPERは極端に低くありませんが、不動産と保有株式を含む純資産に対して市場評価はなお低い水準です。

ここで見るべきは、資産額より資産圧縮の速度です。政策保有株式の縮減、不動産価値の開示、還元方針が進めば修正純資産が株価へ反映されやすくなります。

  • 強気材料:0.6倍未満のPBR、複数の資産価値、資本効率改善余地
  • 弱気材料:広告市況、コンテンツ投資負担、資産を保有し続ける可能性
  • 購入ライン:5,500~5,800円。8月安値圏で下げ止まりを確認
  • 売却ライン:6,300~6,600円。7月高値6,634円付近では追加施策の有無を見る

3.片倉工業(3001)— 再開発期待だけに頼らないか

おすすめ度:★★★★☆/中期向き

8月21日終値は2,953円、予想PER12.55倍、PBR0.94倍。商業施設を含む不動産が注目されやすい一方、医薬品や機械関連など本業の利益も評価に影響します。

株価は6月の年初来安値2,325円から戻り、PBRは1倍に近づきました。修正純資産への期待が一部織り込まれた局面であり、以前ほど単純な割安株ではありません。

  • 強気材料:不動産価値、PBR1倍未満、複数事業による収益源
  • 弱気材料:資産売却の時期が読みにくい、出来高が少ない、本業の変動
  • 購入ライン:2,700~2,850円。直近上昇後の押し目を待つ
  • 売却ライン:3,150~3,300円。年初来高値3,240円付近が最初の評価点

4.三井不動産(8801)— 含み益を成長へ再投資する大型株

おすすめ度:★★★★☆/中長期向き

8月21日終値は1,498円、予想PER14.22倍、PBR1.24倍。年初来高値2,158円から大きく調整し、8月18~19日には1,425円まで下げました。

同社は保有不動産を単に売る会社ではなく、再開発と入れ替えによって資産価値を増やす会社です。このため、修正純資産を清算価値として扱うより、賃料成長と物件売却益の再現性を見るべきです。

  • 強気材料:大型再開発、資産回転、流動性の高い大型株
  • 弱気材料:金利上昇、建築費、人件費、海外不動産市況
  • 購入ライン:1,430~1,480円。年初来安値近辺を下値の基準にする
  • 売却ライン:1,600~1,700円。7月末の下落前水準で業績を再評価

5.京成電鉄(9009)— 鉄道と保有資産を分けて考える

おすすめ度:★★★☆☆/中期向き

8月21日終値は1,354.5円、予想PER16.62倍、PBR1.16倍。6月の年初来安値1,033円から約31%戻しており、資産価値への期待だけで飛びつく局面ではありません。

沿線不動産や保有株式には価値がありますが、鉄道設備の維持投資も必要です。保有資産の時価から負債を引くだけでなく、本業に必要な資本を残す必要があります。

  • 強気材料:沿線開発、空港アクセス、保有資産の活用余地
  • 弱気材料:設備投資負担、資産価値の織り込み、運賃・旅客需要の変動
  • 購入ライン:1,250~1,300円。8月前半の支持帯を基準にする
  • 売却ライン:1,400~1,450円。年初来高値1,419円超えの定着を確認

6.フジ・メディア・ホールディングス(4676)— 高配当と低ROEの綱引き

おすすめ度:★★★☆☆/中期向き

8月21日終値は4,145円、予想PER22.62倍、PBR1.09倍、予想配当200円で利回りは4.83%。一方、実績ROEは0.95%にとどまります。

不動産や保有株式に価値があっても、低い資本収益性が続けばPBR上昇は限定されます。高配当を維持できる利益とキャッシュフローがあるかが最大の確認点です。

  • 強気材料:高い予想配当利回り、資産売却・還元余地
  • 弱気材料:低ROE、放送事業の構造課題、PERの高さ
  • 購入ライン:3,850~4,050円。配当利回り5%前後を一つの目安にする
  • 売却ライン:4,500~4,700円。資産施策を伴わない上昇では利益確定を検討

7.朝日放送グループHD(9405)— 低PBRの理由を解消できるか

おすすめ度:★★★☆☆/長期向き

8月21日終値は833円、予想PER12.87倍、PBR0.43倍。今回の10社ではTBSホールディングス、トーア紡と並ぶ低PBR銘柄です。

ただし、低PBRは割安の証明ではありません。地方・地上波広告の構造変化、コンテンツ投資の回収、資産活用策を合わせて見る必要があります。

  • 強気材料:0.5倍未満のPBR、資産活用と還元の余地
  • 弱気材料:広告収入の変動、低成長、株式の流動性
  • 購入ライン:780~820円。6月安値751円を割らないことが前提
  • 売却ライン:900~950円。年初来高値952円付近で施策の進捗を確認

8.三菱地所(8802)— 資産は一級でも価格には相応の評価

おすすめ度:★★★☆☆/長期向き

8月21日終値は3,688円、予想PER18.91倍、PBR1.63倍、実績ROE8.47%です。2027年3月期第1四半期は営業利益1,212億円、純利益954億円と前年同期から大きく増えました。

丸の内を中心とする資産の質は高い一方、PBRは10社の中で最も高く、単純な割安資産株とは呼びにくい水準です。資産の希少性と利益成長に対してプレミアムを払う銘柄です。

  • 強気材料:都心一等地、賃料成長、ROE8%台
  • 弱気材料:高めのPBR、金利上昇、海外不動産の評価変動
  • 購入ライン:3,550~3,650円。年初来安値3,549円を意識
  • 売却ライン:4,000~4,300円。PBR上昇と利益成長の釣り合いを確認

9.住友不動産(8830)— 値下がり後も金利感応度に注意

おすすめ度:★★★☆☆/中長期向き

8月21日終値は3,339円、予想PER13.83倍、PBR1.20倍。年初来高値5,358円から大幅に下落し、8月19日には3,232円を付けました。

値下がり率だけを見れば反発余地がありますが、不動産株の修正純資産は金利上昇で減少します。還元利回りが上がれば不動産の理論価格が下がり、借入コストも増えるためです。

  • 強気材料:都心オフィス、マンション、13倍台の予想PER
  • 弱気材料:金利感応度、借入負担、下落トレンド
  • 購入ライン:3,230~3,320円。年初来安値での二番底確認を優先
  • 売却ライン:3,600~3,800円。7月下旬の価格帯が戻り売りの壁

10.トーア紡コーポレーション(3204)— 最低PBRだが流動性が課題

おすすめ度:★★☆☆☆/長期・逆張り向き

8月21日の株価は498円、前日までの指標では予想PER約8.5倍、PBR0.30倍。数字だけなら非常に割安です。

一方、8月20日の出来高は5,800株にとどまりました。中間期は売上高87億円、営業利益3億円で、それぞれ前年同期比1.2%減、21.3%減。本業の減益と流動性の低さが、大幅なディスカウントを説明しています。

  • 強気材料:PBR0.3倍、大阪圏の不動産、低い予想PER
  • 弱気材料:本業減益、極端に少ない出来高、価値実現の時期が不透明
  • 購入ライン:470~490円。少額・分散を前提にする
  • 売却ライン:530~560円。年初来高値557円付近では流動性を優先

投資期間別の使い分け

短期は材料と出来高、中期は資産施策、長期は再投資後のROEを見ます。

短期投資

短期では修正純資産の精密な計算より、決算、自社株買い、資産売却などの発表が株価を動かします。

対象にしやすいのは、売買が成立しやすい三井不動産、三菱地所、住友不動産です。トーア紡や片倉工業は出来高が少なく、想定価格で売れないリスクがあります。

中期投資

半年から2年程度なら、資産価値を実際の利益・還元へ変える企業を重視します。

  • 東京建物:物件売却と増配
  • TBSホールディングス:保有資産の圧縮と資本政策
  • フジ・メディアHD:高配当の持続性とROE改善
  • 京成電鉄:沿線資産と保有株式の活用

長期投資

長期では、資産を売った後に何が残るかが重要です。含み益を一度実現しても、本業が赤字なら純資産は再び減ります。

三井不動産や三菱地所のように再開発へ資金を回せる会社は、修正純資産の増加を狙うタイプです。一方、低PBRの放送・繊維会社は、余剰資産の圧縮と本業再建を同時に進められるかを見ます。

修正純資産で陥りやすい五つの落とし穴

最大の誤りは、含み益をそのまま株主の現金だと考えることです。

1.税金と売却費用を引かない

含み益が1,000億円あっても、その全額は残りません。法人税、仲介費用、建物の解体費用などを差し引く必要があります。

2.事業に必要な資産まで売却対象にする

本社、工場、放送設備、鉄道用地は、売れば事業収益も失われます。代替拠点の取得費も発生します。

3.不動産価格が変わらないと仮定する

金利が上がり、投資家の要求利回りが上昇すれば不動産価格は下がります。修正純資産は固定値ではありません。

4.普通株主以外の取り分を無視する

非支配株主持分、優先株、年金債務などを確認しなければ、普通株主に帰属する価値を過大評価します。

5.経営陣が資産を動かすと決めつける

創業家、取引先、自治体との関係から、経済合理性だけでは売却できない資産もあります。売却計画、取締役会の構成、株主還元方針まで確認が必要です。

次の決算で見るべき分岐点

株価の再評価が続く条件は、含み益の開示ではなく、資本効率を改善する実績です。

次回以降の決算・開示では、次の項目を追ってください。

  • 賃貸等不動産の時価と簿価の差が拡大しているか
  • 政策保有株式の売却額と売却代金の使途
  • 自社株買いが発行済み株式数を実際に減らしたか
  • 資産売却益を除いた営業利益が伸びているか
  • ROEとROICが資本コストを上回る方向へ進んだか
  • 金利上昇で支払利息や不動産評価が悪化していないか
  • 監視レンジ到達時に出来高を伴っているか

2026年3月時点でも、PBR1倍割れはプライム市場で27%、スタンダード市場で49%残っています。候補はまだ多いものの、次に選別されるのは資産を持つ会社ではなく、資産を働かせる会社です。

まず最新の有価証券報告書から賃貸等不動産、投資有価証券、有利子負債を拾い、税引後の修正純資産を試算する。そのうえで、次の決算で売却・還元・ROE改善のどれが実行されたかを照合することが、PBRだけに頼らない資産株投資の実践的な手順です。

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