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過去5年IPOで公開価格を上回る銘柄は何社?新興市場の勝ち組と失速銘柄を検証

過去5年IPOで公開価格を上回る銘柄は何社?新興市場の勝ち組と失速銘柄を検証

星評価:★★★☆☆(中立)
ひと言で言えば、過去5年の新興市場IPOは「初値で盛り上がった銘柄」よりも、「上場後に業績やテーマを数字で示した銘柄」が残っています。

投資判断は自己責任であり、本稿の内容は将来の成果を保証するものではありません。ここでは売買推奨ではなく、IPO後の銘柄群を点検するための材料として整理します。

今回の確認時点は2026年6月4日更新データ、株価比較日は主に2026年6月3日終値です。株価は日々動くため、最新の価格で再確認してください。

  • 対象:2021年6月5日から2026年6月4日までに、東証マザーズまたは東証グロースへ新規上場した銘柄
  • 比較:公開価格と直近終値を比較
  • 調整:株式分割がある銘柄は、分割考慮後の比較値を使用
  • 結論:確認可能な316社のうち、公開価格を上回ったのは133社、下回ったのは174社、除外・保留は9社

ここがポイント: 新興市場IPOの約4割は公開価格を上回って残っています。ただし勝ち組は均等に分布しておらず、M&A、宇宙・防衛、黒字化が見えるSaaS、専門サービスなど、投資家が「次の利益」を読める銘柄に偏っています。

目次

集計条件:何を「過去5年の新興市場IPO」としたか

今回は、単純なIPO人気ランキングではありません。上場直後の初値ではなく、公開価格に対して現在株価がどこにあるかを見ました。

対象市場

対象に含めたのは次の市場です。

  • 東証マザーズ
  • 東証グロース

旧JASDAQスタンダード、東証スタンダード、東証プライム、名証ネクスト、札証アンビシャス、福証Q-Boardは除外しました。地方新興市場まで含めると母集団の性格が変わるためです。

比較方法

公開価格と現在株価の比較は、庶民のIPOの「公開価格と現在の株価との比較」ページを基礎にしました。同ページは株式分割後の株価を考慮していると明記しており、分割銘柄はその前提で扱っています。

ただし、次の銘柄は集計から除外または判定保留にしました。

  • 上場廃止、TOB、M&Aなどで通常の株価比較が難しい銘柄
  • テクニカル上場に近く、通常IPOとの比較になじみにくい銘柄
  • 公開価格、分割調整、直近株価の突合で確認余地が残る銘柄

全体集計:公開価格を上回ったのは133社

確認可能な範囲では、公開価格を現在株価が上回っている銘柄は133社でした。比率は約42%です。

項目社数比率
対象候補325社100%
判定対象316社97.2%
公開価格を上回る133社42.1%
公開価格を下回る174社55.1%
除外・判定保留9社2.8%

この数字だけを見ると「半分以上が公開価格割れ」です。ただし、年によって差が大きく、2023年組は比較的健闘し、2024年後半から2025年の小型グロースは選別が厳しくなっています。

年別に見ると、2023年組が最も粘った

年別では、2023年上場組の残存評価が目立ちます。初値人気だけでなく、上場後に売上成長やテーマ性を示せた銘柄が複数残ったためです。

上場年判定対象公開価格超え公開価格割れ除外・保留
2021年6月以降63社18社45社4社
2022年68社31社37社2社
2023年65社38社27社1社
2024年63社25社38社1社
2025年39社16社24社1社
2026年6月4日まで8社5社3社0社
合計316社133社174社9社

2021年後半組は、上場時に高い成長期待を織り込んだ銘柄が多く、金利上昇局面とグロース株のバリュエーション調整を受けました。Institution for a Global Society(4265)のように、公開価格1,720円に対して2026年6月3日前後の比較値が大きく下回る銘柄もあります。

一方、2023年組ではyutori(5892)のように、株式分割を考慮しても公開価格を大きく上回る銘柄が出ました。上場後にブランド展開や業績拡大を投資家が評価し直した例です。

市場再編前後で見える違い

旧マザーズと東証グロースは連続性がありますが、投資家の見方は変わりました。

旧マザーズ期:期待先行の反動が大きい

2021年後半のマザーズIPOは、初値の上昇率が高い銘柄ほど、その後の反落も目立ちました。初値は需給で跳ねても、上場後は決算、成長率、営業赤字の縮小ペースを見られます。

この時期の失速銘柄に共通するのは、次の点です。

  • 上場時点の成長期待が高すぎた
  • 赤字や低利益率のまま金利上昇局面に入った
  • 流通株式が少なく、上昇時も下落時も値動きが荒くなった
  • 四半期決算で投資家の期待を上回れなかった

東証グロース期:テーマだけでは足りない

2022年以降の東証グロースでは、AI、宇宙、防災、M&A、DXなどのテーマ株が多く上場しました。ただし、テーマが強いだけでは公開価格を維持できません。

たとえばSynspective(290A)は宇宙・衛星データという強いテーマを持ち、2024年12月上場後の株価は公開価格480円を大きく上回る場面がありました。一方で、2026年12月期第1四半期は売上697百万円、営業損失1,613百万円と、成長投資の負担も大きい銘柄です。

テーマ性と赤字許容度のバランスが、グロースIPOを見るうえで重要になっています。

業種別:強いのは「成長の説明がしやすい銘柄」

業種別では、情報・通信業が数では中心です。ただし、同じSaaSやDXでも明暗は分かれました。

公開価格を上回りやすかったタイプ

  • M&Aや事業承継など、成長の道筋が買収件数や利益で見える企業
  • 宇宙、防衛、生成AI周辺など、政策・大型テーマと重なる企業
  • ニッチなBtoBサービスで、解約率や利益率の改善を示せる企業
  • 上場時の時価総額が過度に大きすぎなかった企業

技術承継機構(319A)はこの代表例です。2025年2月上場で公開価格2,000円に対し、比較対象日の株価は大きく上回りました。2026年12月期第1四半期決算では売上高6,275百万円、営業利益906百万円を計上しており、M&Aによる成長が数字に出ています。

公開価格を下回りやすかったタイプ

  • 赤字上場で、黒字化時期が遠い企業
  • 初値が高く、セカンダリー資金の逃げ場が限られた企業
  • 小型で流動性が薄く、決算失望時に買い手が減りやすい企業
  • 上場時の成長率がピークに見えた企業

GVA TECH(298A)はリーガルテックのテーマ性がありますが、2024年12月上場後の株価は公開価格690円を下回る水準で推移しました。会社側は2026年12月期に売上成長と黒字化を計画していますが、株価は計画の達成確度を慎重に見ています。

初値人気と現在評価は一致しない

IPO投資でよく見られるのは「初値が強い銘柄は良い銘柄」という見方です。しかし、公開価格比で見ると必ずしも一致しません。

庶民のIPOの年次データでは、2024年IPO全体について、現在株価が初値を上回る銘柄は27社、下回る銘柄は57社でした。一方、公開価格との比較では、現在株価が公開価格を上回る銘柄は38社、下回る銘柄は46社です。

つまり、初値で買った投資家には厳しくても、公開価格ベースではまだプラスの銘柄が残っています。

この差は重要です。

  • 初値は需給、当選株数、ロックアップ、地合いに左右される
  • 公開価格は機関投資家との需要積み上げを経た価格
  • 上場後の株価は、決算と成長ストーリーの再評価で動く

IPO直後の人気は入口の温度です。上場後の評価は、企業が数字を出し続けられるかで決まります。

代表銘柄で見る「残った銘柄」と「失速した銘柄」

ここでは、公開価格比の差が目立つ銘柄をいくつか見ます。短期の株価だけで優劣を断定せず、なぜ差が出たのかを確認します。

技術承継機構(319A):公開価格を大きく上回った例

技術承継機構は、事業承継・中小企業M&Aを軸に成長する企業です。2025年12月期決算では売上高14,961百万円、営業利益1,432百万円を計上し、2026年12月期第1四半期も黒字を維持しました。

公開価格比で大きく上昇した背景には、単なるテーマ人気ではなく、買収後の利益貢献を投資家が評価しやすい点があります。成長投資を続けても、利益の見え方が比較的明確です。

Synspective(290A):テーマは強いが、赤字許容が焦点

Synspectiveは小型SAR衛星を使ったデータ事業で、宇宙・防災・安全保障という強いテーマを持ちます。公開価格480円に対して株価は大きく上回る局面があり、テーマ株としての評価は高い部類です。

ただし、2026年12月期第1四半期は営業損失が続いています。投資家が次に見るべきなのは、受注、衛星打ち上げ、データ販売の拡大、そして赤字縮小の速度です。

GVA TECH(298A):黒字化計画をまだ織り込みきれていない例

GVA TECHは法務DXという分かりやすいテーマを持ちますが、公開価格比では厳しい推移です。2025年12月期決算説明資料では、2026年12月期に前期比41.3%の売上成長と通期黒字化を計画しています。

ここでの論点は、計画が魅力的かどうかではなく、四半期ごとにARR、解約率、営業損益が改善するかです。黒字化の道筋が数字で確認されるまでは、公開価格回復には時間がかかりやすい銘柄です。

時価総額で見ると、小型ほど選別が厳しい

時価総額別では、50億円未満の小型IPOに公開価格割れが多く出ました。小型株は初値が跳ねやすい一方、上場後に機関投資家が入りにくく、決算で失望されると買い支えが薄くなります。

一方、100億円から500億円程度の銘柄には、公開価格を上回る銘柄が比較的多く見られます。事業規模が一定以上あり、成長ストーリーと流動性の両方を投資家に示しやすいためです。

見るべきポイントは単純です。

  • 時価総額が売上や利益に対して重すぎないか
  • 上場後の出来高が細っていないか
  • ロックアップ解除後に需給が崩れていないか
  • 四半期決算で公開価格の前提を上回っているか

IPO後の株価は、初値の記憶ではなく、現在の業績と需給で動きます。

同じテーマの銘柄を見るときの確認ポイント

過去5年の新興市場IPOを見る限り、公開価格を上回る銘柄には共通点があります。派手なテーマよりも、上場後に確認できる数字が重要です。

次に同じテーマの銘柄を見るなら、最低限ここを確認したいところです。

  • 売上成長率:上場時の成長率が維持されているか
  • 営業利益率:赤字なら縮小ペース、黒字なら利益率の改善余地
  • PER・PBR:黒字企業は同業と比べて高すぎないか
  • ROE:成長投資後に資本効率が上がっているか
  • 配当:グロースIPOでは無配が多いが、成熟局面では還元方針も評価材料
  • 出来高:株価上昇時に流動性を伴っているか
  • ロックアップ:解除後に大株主売りが出やすい構造か
  • 上場後の開示:月次、KPI、受注、ARRなどを継続的に出しているか

星評価をあえて付けるなら、今回のコホート全体は★★★☆☆です。買い寄りでも売り寄りでもなく、銘柄間の差が大きい「選別市場」です。

特に次の立会日以降に見るべきなのは、IPO直後の値動きではありません。2026年夏にかけて出る四半期決算で、2024年後半から2025年上場組が公開価格の前提を上回る成長を示せるかです。そこで売上成長と黒字化の両方が見えた銘柄だけが、次の再評価候補になります。

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