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業績上方修正後も益回りで選別したい日本株10選 PERの逆数で期待利益を比べる

PERと益回りを使って日本株10銘柄を比較するイメージ。

業績上方修正後も益回りで選別したい日本株10選 PERの逆数で期待利益を比べる

総合評価:★★★★☆(やや買い寄り)

結論から言えば、益回りは割安株を見つける「答え」ではなく、現在の株価に対して会社予想利益がどれだけあるかをそろえて比べる一次フィルターです。

2026年8月21日時点の会社予想PERから計算すると、今回の10銘柄ではINPEXの益回り11.10%、東京建物の9.18%、三菱ガス化学の7.37%が上位でした。ただし、高い益回りには資源価格、金利、景気循環などによる利益減少リスクも織り込まれています。

本記事は公開情報を基にした比較・学習資料です。投資判断は自己責任であり、記載内容は将来の運用成果を保証しません。株価と指標は原則として2026年8月21日終値時点です。

この記事で分かることは次の4点です。

  • 益回りの計算方法と、PERより直感的に比較できる理由
  • 業績修正後の会社予想PERで比べた日本株10銘柄の違い
  • 益回りが高くても割安とは限らないケース
  • 短期・中期・長期で使い分ける監視価格帯
目次

益回りは「株価に対する予想利益の割合」

益回りの核心は、異なる株価の企業を同じ「%」で比べられることです。

計算式はシンプルです。

益回り(%)=1株当たり利益(EPS)÷株価×100=1÷PER×100

たとえば会社予想PERが10倍なら益回りは10%、PERが20倍なら5%です。100万円分の株式に対し、現在の会社予想利益が理論上いくら対応しているかをイメージできます。

  • PER 8倍:益回り12.50%
  • PER 10倍:益回り10.00%
  • PER 15倍:益回り6.67%
  • PER 20倍:益回り5.00%
  • PER 30倍:益回り3.33%

PERと益回りは同じ情報の表裏ですが、益回りに直すと国債利回り、配当利回り、他銘柄の収益力と比較しやすくなります。

ただし、配当利回りとは意味が違います。益回りの分子は企業が稼ぐ純利益であり、その全額が株主に支払われるわけではありません。企業は利益を配当、自社株買い、設備投資、借入返済などに振り分けます。

今回は「利益予想が動いた後の株価」を比較する

今回の比較で重視したのは、単にPERが低い企業ではなく、2026年8月に決算や業績修正が出た後も予想利益に対して株価が過熱していないかという点です。

トレーダーズ・ウェブの業績修正一覧では、INPEX、森永乳業、三菱ガス化学、テルモ、サイバーエージェント、ゼンショーホールディングス、NIPPON EXPRESSホールディングス、ホンダ、花王、東京建物などの利益見通し引き上げが確認できます。

2026年6月末のJPX資料ではTOPIX500の平均PERは20.9倍で、逆算した益回りは約4.78%でした。時点が異なるため厳密な市場平均ではありませんが、今回の個別銘柄を見る基準の一つになります。

ここがポイント: 高益回り銘柄を機械的に買うのではなく、「利益予想が維持されるか」「一時利益を除いても高いか」「株価がすでに材料を織り込んだか」を確認します。

10銘柄の比較一覧

益回りは2026年8月21日時点の会社予想PERの逆数です。購入・売却ラインは売買指示ではなく、決算内容を再確認するための監視レンジとしています。

銘柄終値予想PER益回り評価向くスタイル
INPEX(1605)3,954円9.01倍11.10%★★★★★中期・長期
東京建物(8804)約3,411円10.89倍9.18%★★★★☆中期・長期
三菱ガス化学(4182)約3,829円13.57倍7.37%★★★★☆中期
サイバーエージェント(4751)1,305.5円16.14倍6.20%★★★★☆短期・中期
ホンダ(7267)1,753円17.06倍5.86%★★★☆☆中期・長期
森永乳業(2264)1,176円18.08倍5.53%★★★☆☆中期・長期
NXHD(9147)約5,559円19.20倍5.21%★★★☆☆中期
テルモ(4543)2,569円19.62倍5.10%★★★★☆中期・長期
花王(4452)3,556円23.83倍4.20%★★★☆☆長期
ゼンショーHD(7550)11,480円33.26倍3.01%★★☆☆☆短期・長期

星評価は益回りだけでなく、利益修正の内容、ROE、財務、直近の株価反応、利益の変動要因を合わせた相対評価です。

高益回りで注目する3銘柄

このグループは数値上の割安感が明確ですが、利益の景気感応度も高めです。

1.INPEX(1605)— 益回り11%でも油価を外せない

評価:★★★★★/中期・長期向け

8月21日終値は3,954円、会社予想PER9.01倍、PBR0.90倍、予想配当利回り2.83%、実績ROE8.23%です。益回りは11.10%で今回首位となりました。

8月7日の中間決算では、2026年12月期の親会社帰属利益予想を5,100億円へ引き上げました。5,000万株・1,400億円を上限とする自社株買いも材料となり、8月14日の3,782円から21日の3,954円まで4.5%上昇しています。21日の出来高は407万1,700株でした。

  • 強気材料:高い益回り、PBR1倍割れ、利益上方修正、自社株買い
  • 弱気材料:油価・ガス価格、ドル円、生産量によって予想EPSが大きく動く
  • 購入監視ライン:3,700~3,900円。PER8.4~8.9倍程度まで待つ考え方
  • 売却・再評価ライン:4,400~4,500円、または油価前提の下方修正時

益回りの高さをそのまま恒久的な収益力とみなさず、イクシスなど主要案件の生産量と原油価格を四半期ごとに確認したい銘柄です。

2.東京建物(8804)— 益回りと配当を両方見やすい

評価:★★★★☆/中期・長期向け

8月21日時点の会社予想PERは10.89倍、益回り9.18%、PBR1.16倍、予想配当利回り3.69%、実績ROE10.45%です。利益と配当の両面から比較しやすい一方、自己資本比率は26.0%で、不動産会社らしく金利と資金調達環境の確認が欠かせません。

  • 強気材料:9%台の益回り、ROE10%台、3%台後半の予想配当利回り
  • 弱気材料:金利上昇、開発物件の売却時期、オフィス市況による利益の振れ
  • 購入監視ライン:3,200~3,350円、またはPER10倍台前半
  • 売却・再評価ライン:3,700~3,800円、長期金利急上昇時

賃貸収益は継続性がありますが、物件売却益まで毎年同じように出るとは限りません。営業利益の内訳を分けて読むことが重要です。

3.三菱ガス化学(4182)— 上方修正の質を見極める

評価:★★★★☆/中期向け

会社予想PER13.57倍から計算した益回りは7.37%。PBR1.12倍、予想配当利回り2.87%、自己資本比率58.1%です。

8月7日に2027年3月期予想を上方修正し、第1四半期は売上高2,237億円、営業利益278億円、純利益183億円でした。メタノール市況、電子材料、円安が利益を押し上げた一方、株価は決算後に上昇と反落を繰り返しました。

  • 強気材料:電子材料の伸び、財務余力、7%台の益回り
  • 弱気材料:市況品と為替の寄与が大きく、利益の再現性を読み違えやすい
  • 購入監視ライン:3,500~3,700円
  • 売却・再評価ライン:4,200~4,300円、またはメタノール市況悪化時

実績ROEがマイナス表示となっている点は、一時損益や過去実績と会社予想利益の期間差を確認すべきサインです。予想PERだけで結論を出さない方が安全です。

益回り5~6%台は「成長との両立」を見る

市場平均との比較だけでなく、利益が翌期以降も伸びるかが評価を分けます。

4.サイバーエージェント(4751)

評価:★★★★☆/短期・中期向け

終値1,305.5円、予想PER16.14倍、益回り6.20%、PBR3.23倍、実績ROE18.87%です。10~6月期営業利益は前年同期比38.2%増の674億円となり、通期予想も引き上げられました。

一方、4~6月期の営業減益が意識され、8月10日の急落後も値幅の大きい展開です。

  • 強気材料:高ROE、通期増益、メディア・ゲーム・広告の複数収益源
  • 弱気材料:四半期利益の失速、ゲーム作品の成否、PBRの高さ
  • 購入監視ライン:1,230~1,280円
  • 売却・再評価ライン:1,450~1,500円、または次四半期も減益の場合

短期では値動き、中期ではABEMAを含むメディア事業の採算改善を分けて判断します。

5.ホンダ(7267)

評価:★★★☆☆/中期・長期向け

終値1,753円、予想PER17.06倍、益回り5.86%、PBR0.55倍、予想配当利回り3.99%です。株価は8月14日の1,658円から21日の1,753円へ5.7%上昇し、年初来高値圏に入りました。

  • 強気材料:PBR1倍割れ、約4%の配当利回り、二輪事業の収益基盤
  • 弱気材料:実績ROEがマイナス、自動車の関税・為替・EV投資負担
  • 購入監視ライン:1,620~1,700円
  • 売却・再評価ライン:1,900~2,000円、または通期利益の再下方修正時

益回りは極端に高くありません。むしろPBRの低さが、資本効率への市場の慎重姿勢を示しています。

6.森永乳業(2264)

評価:★★★☆☆/中期・長期向け

終値1,176円、予想PER18.08倍、益回り5.53%、PBR1.37倍、実績ROE8.36%、予想配当利回り2.13%です。8月には経常利益予想が327億円から350億円へ引き上げられました。

  • 強気材料:海外事業、価格改定、食品株としての需要安定性
  • 弱気材料:原乳・包装材・物流費の上昇、国内人口減少
  • 購入監視ライン:1,100~1,150円
  • 売却・再評価ライン:1,280~1,330円、または原材料高で利益率が悪化した場合

ディフェンシブ株でもコスト増を価格へ転嫁できなければEPSは下がります。売上より営業利益率の推移を優先して確認します。

7.NIPPON EXPRESSホールディングス(9147)

評価:★★★☆☆/中期向け

会社予想PER19.20倍、益回り5.21%、PBR1.59倍、予想配当利回り1.80%です。会社は営業利益予想を1,000億円から1,200億円へ引き上げました。

  • 強気材料:国際物流の回復、業績上方修正、事業地域の分散
  • 弱気材料:実績ROE0.32%、買収後の統合費用、航空・海上運賃の変動
  • 購入監視ライン:5,200~5,400円
  • 売却・再評価ライン:6,000~6,200円、または貨物量が再び鈍化した場合

低い実績ROEに対して予想PERが示す改善幅は大きめです。今後は利益額だけでなく、買収資産を含む資本から十分な利益を生めるかが焦点になります。

8.テルモ(4543)

評価:★★★★☆/中期・長期向け

終値2,569円、予想PER19.62倍、益回り5.10%、PBR2.28倍、実績ROE9.21%です。8月7日には最終利益見通しが1,653億円から1,931億円へ引き上げられました。

株価は8月14日の2,672.5円から21日の2,569円へ下落。8月19日は4.11%安、出来高901万4,900株と商いも膨らみました。

  • 強気材料:医療需要の継続性、上方修正、自己資本比率68.5%
  • 弱気材料:和解金など一時要因を含む可能性、海外売上の為替影響
  • 購入監視ライン:2,450~2,550円
  • 売却・再評価ライン:2,850~3,000円、一時利益を除く本業利益が鈍化した場合

見かけの益回りより、調整後利益を使ったPERを併用したい銘柄です。

低益回りでも成長を買われる2銘柄

低益回りは直ちに売りを意味しません。市場が利益成長や安定性へ高い価格を付けている場合があります。

9.花王(4452)

評価:★★★☆☆/長期向け

終値3,556円、予想PER23.83倍、益回り4.20%、PBR2.87倍、実績ROE11.27%、予想配当利回り2.19%です。会社は2026年12月期営業利益予想を1,820億円から1,900億円へ引き上げました。

  • 強気材料:生活必需品のブランド、連続増配への期待、収益構造改革
  • 弱気材料:益回りは比較対象より低い、原材料・中国需要・為替の影響
  • 購入監視ライン:3,300~3,450円
  • 売却・再評価ライン:3,850~4,000円、利益率改善が止まった場合

長期保有では益回りの高さより、EPSと配当が毎年伸びるかを重視する銘柄です。

10.ゼンショーホールディングス(7550)

評価:★★☆☆☆/短期・長期向け

終値11,480円、予想PER33.26倍、益回り3.01%、PBR6.53倍、実績ROE15.77%です。第1四半期は売上高3,248億円、営業利益248億円で、それぞれ前年同期比16.8%増、57.5%増。成長力は強いものの、今回の10銘柄では最も高い評価を株価に織り込んでいます。

  • 強気材料:高い増収増益率、国内外の店舗網、ROE15%台
  • 弱気材料:低い益回り、食材費・人件費、海外展開と買収の統合リスク
  • 購入監視ライン:10,200~10,800円
  • 売却・再評価ライン:12,500~13,000円、既存店成長が鈍化した場合

決算の勢いを追う短期投資と、海外成長を待つ長期投資には選択肢になりますが、現在の利益だけを基準にした割安株ではありません。

投資期間別の使い分け

益回りは長期ほど有効ですが、利益予想が動く局面では短期の株価反応も無視できません。

短期

決算直後の出来高と窓開け後の値動きを重視します。

  • 対象候補:サイバーエージェント、ゼンショーHD、テルモ
  • 確認点:決算翌日の安値、出来高減少後の反発、会社予想の織り込み
  • 注意点:高益回りでも下方修正懸念が出れば、PERではなくEPSの低下で株価が調整する

中期

次の1~2回の決算で上方修正の再現性を確認します。

  • 対象候補:INPEX、三菱ガス化学、NXHD、森永乳業
  • 確認点:利益率、数量、為替・市況前提、通期進捗率
  • 注意点:一時利益による上方修正は翌期に反動減が出やすい

長期

益回りとROE、配当、成長投資を組み合わせます。

  • 対象候補:東京建物、花王、ホンダ、テルモ
  • 確認点:EPSの複数年成長、資本コストを上回るROE、配当の持続性
  • 注意点:現在の高益回りより、5年後も利益を維持できる事業構造を優先する

益回りが機能しなくなる4つのケース

益回りだけで割安と判断できない最大の理由は、分母ではなく分子の利益が変わるからです。

  • 赤字企業:PERが算出できず、益回りも比較できない
  • 一時利益が大きい企業:資産売却益や和解金でEPSが膨らむと、見かけの益回りが高くなる
  • 景気ピークの企業:資源、自動車、化学、物流では最高益時にPERが低く見えやすい
  • 会計基準や株式数が変わった企業:減損、分割、自社株買いで単純な前年差が読みづらくなる

また、異業種間の益回り比較には限界があります。INPEXの11%とゼンショーHDの3%の差は大きいものの、前者は油価変動、後者は店舗拡大による成長期待を抱えています。同じ%だけを見て優劣を決めると、事業リスクの違いを落としてしまいます。

次の決算までに見るべき分岐点

今回の比較で最優先したいのは、上方修正後の予想EPSが次の四半期でも維持されるかです。

具体的には次を追います。

  • INPEX:原油価格、ドル円、主要プロジェクトの生産量
  • 東京建物:長期金利、オフィス空室率、物件売却益
  • 三菱ガス化学:メタノール市況と電子材料の数量
  • サイバーエージェント:四半期営業利益とメディア事業の採算
  • ホンダ:関税、販売台数、EV関連費用
  • 森永乳業・花王・ゼンショーHD:値上げ後の販売数量と原材料費
  • NXHD:国際貨物量、運賃、買収後の利益率
  • テルモ:一時要因を除いた本業利益と海外販売

次回決算でEPS予想が維持され、株価だけが下がれば益回りは上昇します。反対に株価が変わらなくても利益予想が下がれば、見かけの割安感は消えます。購入ラインへ近づいたときこそ価格だけを見るのではなく、その価格を支えるEPSがまだ残っているかを確認することが実践上の要点です。

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