水不足対策で注目したい日本株10選 水再利用・淡水化・漏水対策を比較
総合評価:★★★★☆(中長期で注目、短期は高値追いに注意)
水不足を投資テーマとして見るなら、単に雨が少ない年の「渇水関連株」を探すより、工場で使う水を繰り返し利用する設備、水をつくる分離膜、漏水を減らす管路更新の3分野に分ける方が実態を捉えやすくなります。
中心候補は、継続課金型サービスを伸ばす栗田工業、高い収益性を持つオルガノ、官需と運営契約を抱えるメタウォーターです。一方、株価指標には既に期待を織り込んだ銘柄もあり、テーマだけを理由に一括して買える状況ではありません。
- 水再利用の本命候補:栗田工業、オルガノ
- 海水淡水化の技術候補:東レ、荏原製作所
- 漏水・老朽管対策の候補:NJS、日本鋳鉄管、前澤ホールディングス
- 比較の基準:水関連事業の比重、利益率、受注継続性、株価指標、直近の値動き
投資判断は自己責任です。本記事は特定銘柄の売買を勧めるものではなく、将来の株価や投資成果を保証しません。 株価と指標は取得できた2026年6月26日〜7月28日の市場データ、業績は各社の直近公表資料を基に、2026年8月1日時点で整理しています。実際の売買前には最新株価と開示資料を再確認してください。
水不足は「水を運ぶ」より「使用量を減らす」企業に波及する
業績へ直結しやすいのは、緊急給水ではなく、平時から工場や自治体の水使用量を減らす設備とサービスです。
工業用水が不足すると、半導体、化学、食品、医薬品などの工場は取水制限や生産調整のリスクに直面します。ただし、渇水が発生しただけで水関連企業の利益が一斉に増えるわけではありません。
企業業績への波及経路は主に次の3つです。
-
工場内の水再利用
排水を処理して工程へ戻し、新たな取水量と排水量を減らす。装置販売に加え、薬品、保守、運転管理が継続収益になります。 -
海水・かん水の淡水化
RO膜、ポンプ、前処理設備を組み合わせて水源を増やす。海外大型案件の寄与が大きい一方、受注時期や採算の振れも大きくなります。 -
漏水の発見と管路更新
自治体が管路を調査し、老朽管を交換して有収率を改善する。国内では更新需要が長く続く半面、公共予算、人員不足、工期の制約があります。
つまり、猛暑や少雨は関心を高める入口にすぎません。中長期の利益を左右するのは、顧客が設備投資を継続するか、導入後の保守・薬品・運営収入を積み上げられるかです。
水不足対策関連10銘柄の比較一覧
評価上位ほどテーマとの接点と収益の継続性を重視し、株価の割高感が強い銘柄は一段割り引きました。
購入・売却ラインは断定的な目標株価ではなく、掲載した基準株価に対する監視レンジです。決算で利益予想が変われば、同じ株価でも評価は変わります。
| 銘柄 | 主な役割 | 評価 | 向く期間 | 購入監視ライン | 利益確定・見直しライン |
|---|---|---|---|---|---|
| 栗田工業(6370) | 工業用水再利用・薬品・保守 | ★★★★☆ | 中長期 | 基準株価から8〜12%安 | 予想PER26倍超、または利益率低下 |
| オルガノ(6368) | 超純水・排水回収 | ★★★★☆ | 中期 | 14,000〜15,000円 | 18,000〜20,000円、または受注鈍化 |
| メタウォーター(9551) | 上下水処理・運営 | ★★★★☆ | 中長期 | 3,000〜3,200円 | 3,800〜4,200円、または採算悪化 |
| 荏原実業(6328) | 水処理設備・遠隔監視 | ★★★★☆ | 中期・配当 | 2,200〜2,400円 | 2,800〜3,000円、または受注減 |
| イワキ(6237) | 薬液移送ポンプ | ★★★★☆ | 中長期 | 3,400〜3,700円 | 4,300〜4,600円、または増益率鈍化 |
| NJS(2325) | 上下水道設計・管路DX | ★★★☆☆ | 中長期 | 4,200〜4,400円 | 5,200〜5,600円、または受注残減少 |
| 東レ(3402) | 海水淡水化用RO膜 | ★★★☆☆ | 長期 | 1,050〜1,120円 | 1,300円前後、または水処理の伸び鈍化 |
| 荏原製作所(6361) | 淡水化・送水用ポンプ | ★★★☆☆ | 短中期 | 5,400〜5,800円 | 6,800円超、または成長率下方修正 |
| 前澤ホールディングス(6485) | 処理設備・バルブ・管材 | ★★★☆☆ | 中長期・配当 | 1,550〜1,700円 | 2,000円前後、または統合効果の遅れ |
| 日本鋳鉄管(5612) | 上水道用ダクタイル鉄管 | ★★☆☆☆ | 逆張り・長期 | 1,450〜1,550円 | 1,850〜2,000円、または赤字転落 |
ラインの考え方は銘柄ごとに異なります。高ROEの成長株は決算後の押し目、官需株は受注残と採算、低PBR株は利益回復の確認を優先します。
1. 栗田工業(6370)—再利用水を継続収益へ変える本命候補
評価は★★★★☆。水不足対策との接点だけでなく、装置納入後のサービス収入が厚い点を評価します。
2026年3月期中間期は売上高1,982.96億円、営業利益249億円で、前年同期比はそれぞれ1.4%増、15.9%増でした。一般水処理市場ではサービス事業比率が高く、薬品、メンテナンス、運転改善を継続提供できることが利益率を支えます。
- 強気材料:工場の節水・排水回収需要、半導体向け超純水、継続課金型サービス
- 弱気材料:予想PERが20倍台で、成長期待が相応に織り込まれている
- 購入ライン:直近株価から8〜12%の調整、または予想PER20倍前後
- 売却・見直しライン:予想PER26倍超で利益成長が追いつかない場合
短期の渇水報道を追うより、一般水処理サービスの売上比率と営業利益率を四半期ごとに確認したい銘柄です。
2. オルガノ(6368)—高ROEだが値動きも大きい超純水株
評価は★★★★☆。収益力は10社中でも上位ですが、買値の管理が欠かせません。
6月26日時点の株価は16,370円、予想PER25.09倍、PBR5.27倍、ROE21.52%。売上高成長率は12.6%、予想経常増益率は4.9%でした。半導体工場向け純水設備に強く、排水回収まで含む案件が増えれば、水不足対策と先端半導体投資の両方が追い風になります。
一方、年初高値20,145円から6月11日には13,245円まで下落しており、期待の変化が株価へ強く出ます。
- 強気材料:ROE20%超、半導体向け超純水、海外展開
- 弱気材料:PBR5倍超、設備投資サイクルへの感応度
- 購入ライン:14,000〜15,000円で下げ止まりを確認
- 売却・見直しライン:18,000〜20,000円、または受注高が前年割れ
短期で追いかけるより、決算後に受注残と粗利益率を確認して分割購入する中期型です。
3. メタウォーター(9551)—官需と運営契約を組み合わせる安定型
評価は★★★★☆。渇水の瞬発力より、老朽施設の更新と長期運営契約を取り込む銘柄です。
7月10日時点の株価は3,235円、予想PER14.12倍、PBR1.58倍、ROE10.70%、予想配当利回り2.47%。売上高成長率14.4%、経常増益率10.1%が見込まれていました。
官需が8割を超えるため急成長しにくい反面、上下水処理設備の更新、運転・維持管理、官民連携契約が収益を平準化します。水道機工への公開買い付けと資本業務提携は、浄水・再生水分野の事業基盤拡大につながるかが焦点です。
- 強気材料:受注残、長期運営契約、再生水処理の拡大
- 弱気材料:公共工事の採算、人件費・資材費の上昇
- 購入ライン:年初安値3,045円に近い3,000〜3,200円
- 売却・見直しライン:年初高値圏の3,800〜4,200円、または不採算案件増加
4. 荏原実業(6328)—収益性と配当の均衡が取れた中型株
評価は★★★★☆。水処理設備に加え、監視・制御を含む更新需要を取り込める点が強みです。
7月15日時点で株価2,432円、予想PER12.69倍、PBR2.04倍、ROE17.06%、配当利回り3.08%。売上高成長率6.8%、経常増益率2.9%の予想でした。自己資本比率は2025年12月期に57.75%で、財務にも余裕があります。
- 強気材料:二桁ROE、配当、水処理・遠隔監視の更新需要
- 弱気材料:官公需の年度末偏重、信用買い残の増加
- 購入ライン:2,200〜2,400円
- 売却・見直しライン:年初高値に近い2,800〜3,000円、または受注高減少
8月5日の決算では売上高より、受注残、営業利益率、資材高の転嫁状況が重要です。
5. イワキ(6237)—水処理工程の「消耗する心臓部」を担う
評価は★★★★☆。水処理専業ではありませんが、薬液移送ポンプの交換・保守需要に継続性があります。
6月26日時点の株価は3,585円、予想PER15.45倍、PBR1.92倍、ROE12.20%、配当利回り2.57%。予想売上高成長率6.9%、経常増益率3.9%でした。自己資本比率は2026年3月期に74.05%と高水準です。
株価は3月23日の年初安値2,423円から6月23日の3,780円まで上昇しました。7月3日には4,150円まで上げており、短期的な過熱には注意が必要です。
- 強気材料:多品種のケミカルポンプ、海外売上、強い財務
- 弱気材料:短期間の株価上昇、設備投資減速
- 購入ライン:3,400〜3,700円までの調整
- 売却・見直しライン:4,300〜4,600円、または受注・増益率の鈍化
6. NJS(2325)—漏水対策を調査・設計・DXから支える
評価は★★★☆☆。水道管そのものではなく、どこを直すか決める上流工程を担います。
7月28日時点の株価は4,470円、予想PER17.37倍、PBR1.49倍、ROE7.99%、配当利回り2.46%。予想売上高成長率12.7%、経常増益率9.3%でした。
国土交通省の上下水道DX技術カタログには、管路情報管理、IoTセンサーを使う設備監視などNJSの技術が掲載されています。技術者不足の自治体が調査・設計・維持管理を外部へ委ねる流れは追い風です。
- 強気材料:官民連携、管路DX、調査から施工監理までの一貫対応
- 弱気材料:人材確保、公共予算、案件検収時期による業績偏重
- 購入ライン:年初安値4,275円に近い4,200〜4,400円
- 売却・見直しライン:5,200〜5,600円、または受注残減少
8月12日の決算は、受注高と技術者一人当たりの生産性を確認する分岐点です。
7. 東レ(3402)—海水淡水化の成長を全社業績へつなげられるか
評価は★★★☆☆。RO膜の技術力は高いものの、水処理は巨大な事業ポートフォリオの一部です。
6月26日時点の株価は1,138.5円、予想PER18.42倍、PBR0.92倍、ROE4.53%、配当利回り2.28%。予想売上高成長率9.5%、経常増益率48.7%でした。
東レは高い塩除去率と薬品耐性を備えた次世代海水淡水化用RO膜を開発し、2026年10月からの販売開始を予定しています。中東など淡水化市場の拡大は追い風ですが、連結業績は繊維、樹脂、炭素繊維、電子材料の影響も大きく受けます。
- 強気材料:RO膜の技術、海外淡水化需要、PBR1倍割れ
- 弱気材料:ROEの低さ、水処理事業の全社利益への寄与が見えにくい
- 購入ライン:1,050〜1,120円
- 売却・見直しライン:1,300円前後、または水処理事業の利益成長停滞
技術ニュースだけで買わず、環境ソリューション部門の売上と利益を追う必要があります。
8. 荏原製作所(6361)—淡水化需要だけでは説明できない大型成長株
評価は★★★☆☆。ポンプ需要は有望ですが、現在の株価は半導体関連事業への期待も強く反映しています。
7月1日時点の株価は6,300円、予想PER28.92倍、PBR5.66倍、ROE15.61%、配当利回り1.05%。予想売上高成長率6.4%、経常増益率28.0%でした。株価は年初安値3,807円から6月19日の6,890円まで大きく上昇しています。
- 強気材料:大型ポンプ、淡水化・送水案件、業績予想の上方修正
- 弱気材料:高いPER・PBR、半導体投資の変動、海外大型案件の採算
- 購入ライン:5,400〜5,800円で業績見通しを再確認
- 売却・見直しライン:6,800円超、または利益予想の下方修正
水不足関連として投資する場合も、精密・電子事業の受注が株価を動かす点を外せません。
9. 前澤ホールディングス(6485)—統合後の還元と相乗効果を待つ
評価は★★★☆☆。上下水処理設備、バルブ、塩ビ管材を持つ一方、持株会社移行直後で比較データの連続性に注意が必要です。
前澤工業と前澤化成工業は2026年に共同持株会社へ移行しました。水処理機械から管材まで扱えるため、老朽施設の更新を広く取り込める可能性があります。国土交通省のDX技術カタログには、前澤工業と前澤エンジニアリングによる水中ドローン点検も掲載されています。
- 強気材料:上下水道更新の幅広い製品群、統合による営業・調達効率化、配当
- 弱気材料:統合費用、シナジーの不確実性、旧2社との指標比較の難しさ
- 購入ライン:1,550〜1,700円で統合後業績を確認
- 売却・見直しライン:2,000円前後、または統合効果の発現遅れ
見かけ上のPERだけで判断せず、統合後のプロフォーマ利益、配当方針、受注残を優先します。
10. 日本鋳鉄管(5612)—割安感より利益回復を確認したい管路株
評価は★★☆☆☆。PBRは低いものの、収益性の弱さが割安さの背景です。
7月27日時点の株価は1,569円、予想PER50.42倍、PBR0.51倍、ROE0.95%、配当利回り1.59%。上水道向けダクタイル鉄管と耐震管を手掛け、老朽管更新の直接的な受益候補です。
ただし、年初高値2,249円から大きく調整し、出来高も7,300株にとどまりました。原材料高や工事進捗の影響を受け、テーマの強さがそのまま利益へ転換されるとは限りません。
- 強気材料:老朽管・耐震化需要、PBR0.5倍台
- 弱気材料:ROE1%未満、低い流動性、原材料・物流コスト
- 購入ライン:年初安値1,491円に近い1,450〜1,550円で利益回復を確認
- 売却・見直しライン:1,850〜2,000円、または営業赤字への転落
逆張り候補ですが、PBRだけを根拠にせず、値上げ浸透と営業利益率の改善が条件です。
投資スタイル別の使い分け
短期は決算材料、中期は受注と利益率、長期は継続収益の比率で選ぶのが基本です。
短期向き
- オルガノ:決算後の受注・利益率変化で値幅が出やすい
- 荏原製作所:業績修正と半導体関連株の地合いに反応しやすい
- 荏原実業:8月5日の決算が短期の分岐点
短期では渇水ニュースだけを追わず、出来高を伴う高値更新か、決算後の窓開けを維持できるかを確認します。
中期向き
- 栗田工業:サービス比率と利益率の改善
- イワキ:海外販売と交換需要
- NJS:受注残と管路DX案件
- メタウォーター:大型案件の採算と運営契約
3〜12カ月では、売上高より受注残、営業利益率、会社計画の上方修正余地が重要です。
長期向き
- 東レ:淡水化膜の販売拡大を待つ
- 前澤ホールディングス:統合効果と還元方針を確認する
- 日本鋳鉄管:更新需要が利益回復へ結びつくかを見極める
長期投資でも、低PBRや社会課題だけでは保有理由になりません。ROEが資本コストを上回る方向へ動いているかを年次で確認します。
2000年代・2010年代との違いは「再利用」と「デジタル化」
今回の水不足テーマは、淡水化プラントの建設だけでなく、既存設備を効率よく使うサービスへ投資対象が広がった点に特徴があります。
2000年代は中東やアジアの大型淡水化案件が注目され、膜やポンプの納入企業が中心でした。2010年代には半導体工場向け超純水や排水規制対応が拡大。現在はそこへ、次の需要が重なっています。
- 工場内での水循環率向上
- センサーによる常時漏水監視
- AIを使う管路劣化予測
- 自治体施設の包括運営・官民連携
- 水処理装置の売り切りからサービス契約への移行
この変化では、装置の受注額だけでなく、納入後に何年収益を得られるかが企業価値を分けます。栗田工業のサービス、メタウォーターの運営契約、NJSの設備管理システムは、その代表例です。
共通リスクと前提が崩れる条件
最大のリスクは、水不足が深刻でも企業の利益増加まで時間がかかることです。
公共インフラは予算化、入札、設計、施工まで数年かかります。民間工場も、節水設備の投資回収期間が長ければ計画を延期します。
共通して確認したい下振れ要因は次の通りです。
- 資材費、人件費、電力費の上昇を契約価格へ転嫁できない
- 自治体の技術者不足で発注や工事が遅れる
- 海外淡水化案件で工期遅延や追加費用が発生する
- 半導体工場の投資延期で超純水設備の受注が減る
- 渇水解消後に短期資金がテーマ株から流出する
- 高PER銘柄で利益成長が市場期待を下回る
ここがポイント: 水不足そのものではなく、受注高、受注残、サービス売上比率、営業利益率が同時に伸びているかを確認することが、テーマ投資と業績投資を分けます。
次に確認するべき決算と指標
8月相場では、ニュースの件数より決算で示される受注と採算が重要です。
直近の監視ポイントは以下です。
- 8月5日:荏原実業の受注高、営業利益率、通期計画
- 8月6日:栗田工業の一般水処理サービスと電子市場の利益率
- 8月12日:NJSの受注残、官民連携・DX案件の進捗
- オルガノ:半導体向け大型案件と受注採算
- メタウォーター:水道機工との提携効果、不採算案件の有無
- 東レ:新型RO膜の2026年10月販売開始と環境ソリューションの利益寄与
株価が監視ラインへ下がっても、会社計画が下方修正されたなら「安くなった」とは限りません。反対に、株価が高値圏でも受注、利益率、継続収益がそろって上方修正されれば、評価レンジを引き上げる余地があります。
水不足対策株を選ぶ最後の基準は、雨量ではありません。次の決算で、水を節約する技術が受注残と利益へ変わっているか。 まずそこを数字で確認したいところです。
