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電力高を利益機会に変える日本株10選 省エネ・受配電・自動化で選ぶ

夏の電力コストを抑える工場と受配電・省エネ設備のイメージ。

電力高を利益機会に変える日本株10選 省エネ・受配電・自動化で選ぶ

総合評価:★★★★☆(中長期で注目)

結論から言えば、夏の電気料金上昇局面で注目したいのは、単に電力をあまり使わない企業ではありません。工場やビル、データセンターに対し、使用電力量を減らす設備や、電力を安定して配る機器を販売できる企業です。

一方、同じ関連株でも評価は分かれます。高い受注残を利益へ変えられる企業がある一方、部材費、人件費、自社工場の電力費が膨らみ、売上増が利益増につながらない企業もあります。

本記事は2026年8月1日時点で確認できる公表資料を基にした情報整理です。投資判断は自己責任であり、掲載内容は将来の運用成果を保証するものではありません。

この記事で分かること

  • 電気料金上昇が企業業績へ波及する経路
  • 省エネ・受配電・自動化関連10社の違い
  • PER、PBR、ROEだけでは見抜けない利益耐性
  • 短期・中期・長期それぞれの監視条件
目次

今回注目する10銘柄

最も重視したのは、顧客の電力コスト削減が売上や受注へ直結するかどうかです。

選定対象は、電力会社そのものではなく、工場、ビル、物流施設、データセンターなどの需要家側を支える企業としました。直近記事で扱われた空調、物流、レジャー、交通、水処理関連の中心銘柄は外しています。

評価軸は次の5点です。

  • 省エネ投資や電力インフラ投資との直接性
  • 受注残と売上成長の持続性
  • 営業利益率と価格転嫁力
  • ROE、財務、配当・自社株買い
  • 株価に織り込まれた期待と失速時の下値リスク

比較一覧

数値は2026年8月1日時点で確認可能な会社資料と直近市場データによる概算レンジです。株価で変動するPER・PBRは、発注前に最新値を再確認してください。

銘柄評価PER・PBRの目安向く期間購入を検討する条件利益確定・撤退条件
富士電機(6504)★★★★★PER 20倍台/PBR 3倍前後中長期25日線付近への調整、または受注増を伴う高値更新受注高の減速、営業利益率低下、75日線の明確な割れ
アズビル(6845)★★★★☆PER 20倍台/PBR 3倍前後長期決算後の利益確定で予想PERが過去レンジ中央へ戻る局面ビル・工場向け受注の鈍化、利益率悪化
横河電機(6841)★★★★☆PER 20倍前後/PBR 2倍台中長期受注残を維持したまま75日線近辺まで調整海外受注減、円高と案件採算悪化の同時進行
明電舎(6508)★★★★☆PER 約18倍/PBR 約2.3倍中期決算通過後に出来高が平常化し、直近安値を維持変電需要の鈍化、急騰後の支持線割れ
日東工業(6651)★★★★☆PER 約15倍/PBR 約1.4倍中長期4,400円台を中心とする押し目で業績予想を維持4,000円割れ定着、配電盤需要または還元方針の後退
東光高岳(6617)★★★☆☆PER 10倍台/PBR 1倍前後中期受注採算の改善を確認し、PBR1倍近辺で下げ止まる場面低採算案件の増加、営業キャッシュフロー悪化
ダイヘン(6622)★★★★☆PER 20倍前後/PBR 2倍台中長期EV・半導体期待による上昇が一服し、受注を伴って反発設備投資サイクル悪化、予想PER上昇だけで高値更新
三菱電機(6503)★★★★☆PER 20倍台/PBR 3倍前後長期FA需要の底入れとインフラ部門の利益維持を同時確認FA回復の再延期、上方修正を伴わない高値追い
荏原製作所(6361)★★★★☆PER 20倍前後/PBR 3倍前後中長期精密・インフラ両部門の受注を確認した押し目半導体投資減速と大型案件採算悪化の重複
IDEC(6652)★★★☆☆PER 10倍台後半/PBR 1倍台中期逆張りROE改善と在庫調整終了を決算で確認減収継続、ROE低下、前回安値の更新

なぜ夏の電力高が設備投資につながるのか

電気料金の上昇は、使用量の多い企業に「節電」ではなく設備更新を促します。

電気料金には、使用電力量に応じた料金のほか、燃料価格を反映する燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金が含まれます。2026年度の再エネ賦課金単価は1kWh当たり4.18円です。

政府は2026年7~9月使用分を対象とする料金支援を実施しました。ただし、補助は恒久的な利益改善策ではありません。工場や商業施設にとって重要なのは、補助終了後も使用電力量を抑えられることです。

設備投資は主に次の順で広がります。

  1. 電力の使用場所と時間帯を計測する
  2. 制御システムで空調や製造設備の運転を最適化する
  3. 変圧器、配電盤、インバーターを高効率品へ交換する
  4. 太陽光、蓄電池、自家発電を組み合わせる
  5. デマンドレスポンスでピーク時の使用量を抑える

この流れでは、計測・制御、受配電、パワーエレクトロニクスを持つ企業が受注機会を得ます。

一方、帝国データバンクの2026年6月調査では、エネルギー価格上昇が「大きなマイナス」または「ややマイナス」と答えた企業が合計89.4%に達しました。製造業は94.8%、運輸・倉庫業は93.5%です。設備需要が強くても、供給企業自身の工場コストが上がる点は無視できません。

ここがポイント: 電力高に強い企業とは、自社の使用電力が少ない企業だけではない。顧客の電気代削減額を、自社の受注と利益へ変えられる企業である。

個別銘柄を比較する

1.富士電機(6504)— 電力インフラと省エネを両方取れる

10社の中では事業の直結度が最も高い候補です。

富士電機は変電機器、電源機器、パワー半導体、エネルギーマネジメントを展開します。2026年3月期は、蓄電システム、変電機器、産業向け電源機器の大口案件がエネルギーマネジメント部門を押し上げました。

  • 強気材料:電力網更新、データセンター、工場電化という複数の需要源
  • 弱気材料:期待先行によるバリュエーション上昇、設備増強費、パワー半導体市況
  • 注目指標:受注高、エネルギーマネジメントの営業利益率、設備投資額
  • 売買の考え方:中長期向き。25日線への調整か、受注増を伴う高値更新を待ちたい

売上成長だけでなく、増産投資後も利益率を維持できるかが評価の分岐点です。

2.アズビル(6845)— 建物と工場の電力使用を制御する

電気代削減を継続収益へつなげやすい点が強みです。

アズビルはビルディングオートメーションと工場向け制御を主力とします。導入後の保守、更新、運用支援があるため、一度限りの機器販売だけに依存しません。

  • 強気材料:省エネ改修、老朽ビル更新、保守契約の積み上げ
  • 弱気材料:高評価が定着しており、決算未達時の下落幅が大きくなりやすい
  • 注目指標:受注残、サービス売上、営業利益率、ROE
  • 売買の考え方:長期向き。高値追いより、決算後にPERが過去レンジ中央へ戻る局面を待つ

電力高が一服しても、保守と更新需要が残るかどうかが長期評価を支えます。

3.横河電機(6841)— 大規模プラントの運転効率を改善

電力使用量だけでなく、原料、蒸気、保守費まで含めた効率化が可能です。

横河電機は石油、化学、電力などのプラント制御に強みを持ちます。顧客の設備停止が大きな損失につながるため、制御システムは価格だけで置き換えにくい事業です。

  • 強気材料:脱炭素投資、海外プラント更新、ソフト・サービス比率の上昇
  • 弱気材料:大型案件の検収時期、為替、資源国の設備投資に左右される
  • 注目指標:海外受注、受注残、粗利益率、円換算影響
  • 売買の考え方:中長期向き。75日線近辺への調整でも受注残が減らないことを確認する

電力高だけを材料にせず、継続的な収益構造への転換を評価したい銘柄です。

4.明電舎(6508)— 変電設備更新の恩恵が大きい

追い風は強いものの、株価の振れも大きい中期型です。

明電舎は変電、発電、電鉄、水処理向けの電機設備を供給します。2026年7月21日時点では終値8,760円、PER約18.1倍、PBR約2.27倍でした。期待が一定程度織り込まれた水準とみる必要があります。

  • 強気材料:送配電設備更新、再エネ接続、データセンター周辺の電源需要
  • 弱気材料:大型案件の採算変動、部材費、急騰後の需給悪化
  • 注目指標:受注高、営業利益率、棚卸資産、営業キャッシュフロー
  • 売買の考え方:中期向き。決算直後の値動きと出来高が落ち着くまで待つ

受注増だけで飛びつかず、受注時の採算と売上計上時の利益率を確認することが重要です。

5.日東工業(6651)— 配電盤需要と還元を両面評価

バリュエーションと配当を重視する投資家に比較的合わせやすい銘柄です。

日東工業は高圧受電設備、分電盤、キャビネット、データセンター向けラックを展開します。2026年7月8日時点の終値は4,535円、PER約14.8倍、PBR約1.39倍でした。

  • 強気材料:工場・データセンターの受配電投資、比較的低いPER、株主還元
  • 弱気材料:鋼材価格、住宅・建設需要、案件の納期ずれ
  • 注目指標:配電盤の受注、材料費率、配当性向、ROE
  • 売買の考え方:中長期向き。4,400円台を中心に業績予想を維持できる押し目を監視

4,000円を継続的に割り込み、同時に利益予想や還元方針が後退するなら、投資前提を見直す場面です。

6.東光高岳(6617)— 割安さより採算改善を優先

送配電投資との関連は深い一方、低PBRだけでは買い理由になりません。

同社は変圧器、開閉装置、スマートメーター、急速充電器を手掛けます。電力網の更新は長期需要ですが、大型機器は原材料と人件費の影響を受けます。

  • 強気材料:電力網更新、分散電源、EV充電インフラ
  • 弱気材料:低採算案件、資材高、利益率の低さ
  • 注目指標:受注採算、営業利益率、運転資本、ROIC
  • 売買の考え方:中期向き。PBR1倍近辺という理由だけでなく、採算改善を確認してから

購入ラインは株価だけでなく、四半期の営業利益率が前年同期を上回ることと組み合わせたいところです。

7.ダイヘン(6622)— 変圧器、溶接、半導体で成長源が分散

電力機器に加えて工場自動化の回復も取れる複合型です。

ダイヘンは変圧器、パワーコンディショナー、溶接機、半導体製造装置向け電源を展開します。テーマが多い分、業績のどこが伸びたのかを分解する必要があります。

  • 強気材料:変圧器需要、再エネ、EV、半導体設備投資
  • 弱気材料:設備投資サイクル、電子部品市況、複数事業への投資負担
  • 注目指標:電力機器の受注、ロボット・半導体関連売上、営業利益率
  • 売買の考え方:中長期向き。受注増を伴わない株価上昇は追わない

電力高という一材料だけでなく、半導体とFAの循環も同時に確認すべき銘柄です。

8.三菱電機(6503)— 大型株としての安定感と期待先行の両面

事業分散が下支えになる半面、省エネ需要だけで全社利益は決まりません。

FA、空調、ビルシステム、電力システム、半導体などを持ち、工場の省エネ化を広く支えます。大型株で流動性が高く、テーマ資金が入りやすい点も特徴です。

  • 強気材料:FA回復、電力インフラ、防衛・宇宙、事業改革
  • 弱気材料:中国を含む設備投資の弱さ、期待の織り込み、事業間の収益差
  • 注目指標:FA受注、インフラ利益率、ROE、事業売却・資本配分
  • 売買の考え方:長期向き。FA底入れとインフラ利益維持の両方を確認する

直近3カ月で調整する局面があっても、業績予想が維持されれば押し目候補になります。反対に、上方修正を伴わない急騰は利益確定を検討する局面です。

9.荏原製作所(6361)— 高効率機器と半導体需要を組み合わせる

ポンプの省エネ需要は長期的ですが、株価は半導体投資にも敏感です。

荏原製作所はポンプ、コンプレッサー、冷熱機械に加え、半導体製造装置を展開します。モーターを使うポンプの高効率化は、工場やインフラの電気代削減に直結します。

  • 強気材料:ポンプ更新、インフラ投資、半導体の先端投資
  • 弱気材料:半導体投資の反動、大型案件の採算、原材料費
  • 注目指標:精密・インフラ両部門の受注、利益率、フリーキャッシュフロー
  • 売買の考え方:中長期向き。片方の部門だけでなく両部門の受注を確認する

半導体需要が失速した際、インフラ部門だけで利益成長を維持できるかが下値の分岐になります。

10.IDEC(6652)— 回復確認後に狙う逆張り候補

割安感よりも、在庫調整の終了とROE改善が先です。

IDECはスイッチ、安全機器、制御機器を扱います。工場の自動化・安全化・省エネ化に関係しますが、FA市況が弱い局面では販売数量が伸びません。2026年5月更新の市場データでは実績ROEは約5.85%でした。

  • 強気材料:FA在庫調整の終了、安全規制強化、収益改善余地
  • 弱気材料:低ROE、設備投資停滞、減収局面の固定費負担
  • 注目指標:受注、在庫、粗利益率、ROE
  • 売買の考え方:中期の逆張り向き。減収の底打ちを確認するまで待つ

安いから買うのではなく、受注が前年同期を上回り、在庫が減り始めた時点を転換候補とします。

短期・中期・長期で銘柄を使い分ける

同じテーマでも、決算を取る銘柄と数年保有する銘柄は分けるべきです。

短期:決算と出来高を重視

対象候補は明電舎、東光高岳、IDECです。

  • 購入条件:上方修正、受注増、利益率改善のいずれかを伴う出来高増
  • 利益確定条件:材料発表後に長い上ヒゲが出る、または出来高を伴って25日線を割る
  • 撤退条件:会社予想の下方修正や、主力部門の受注減

値動きが大きいため、決算前に大きなポジションを取るより、開示後に数字と株価反応を確認する方が再現性を持たせやすくなります。

中期:受注残が売上と利益へ変わる過程を見る

対象候補は富士電機、横河電機、ダイヘン、荏原製作所です。

  • 購入条件:受注残を維持しながら75日線付近へ調整
  • 利益確定条件:受注の伸びが止まる一方、予想PERだけが上昇
  • 撤退条件:営業利益率と営業キャッシュフローが同時に悪化

受注残が増えていても、棚卸資産や売掛金が急増して現金化が遅れている場合は注意が必要です。

長期:保守収入、ROE、資本配分を見る

対象候補はアズビル、三菱電機、日東工業です。

  • 購入条件:サービス収入や更新需要が伸び、ROEが資本コストを上回る
  • 利益確定条件:成長率を大きく上回るPER上昇
  • 撤退条件:還元縮小、ROE低下、競争優位を損なう値下げ

長期では、夏の電気料金という季節材料より、補助終了後も顧客が設備更新を続けるかを重視します。

電力高に弱い企業を見分ける5つの数字

売上が伸びていても、電力費を吸収できなければ利益耐性は低いままです。

業種名だけで強弱を判断せず、決算資料で次を確認します。

  • 売上高営業利益率:1~2ポイントのコスト上昇を吸収できる余地があるか
  • 価格転嫁率:値上げが販売数量の減少を招いていないか
  • 電力原単位:製品1単位または売上1円当たりの使用電力量が低下しているか
  • 営業キャッシュフロー:受注増が現金収入につながっているか
  • ROICとROE:設備投資の拡大が資本効率を悪化させていないか

特に、素材、ガラス、紙、冷凍設備、データセンターなどは電力使用量が大きくなりやすい業種です。ただし、自家発電、長期電力契約、価格転嫁、省エネ設備の有無で影響は変わります。「電力多消費産業だから弱い」と一括りにしないことが大切です。

2022年の資源高局面との違い

今回の特徴は、料金上昇への防御と電力需要拡大への投資が同時に起きていることです。

2022年の資源高局面では、急激な燃料価格と円安への対応が中心でした。2026年はそれに加え、データセンター、半導体工場、電化、再生可能エネルギー接続による系統増強が重なっています。

そのため、今回の設備需要は二つに分かれます。

  • 短期要因:夏のピーク需要、料金補助、燃料価格、需給不安
  • 中長期要因:送配電網更新、データセンター増設、工場自動化、蓄電池、脱炭素投資

短期要因が消えても中長期の受注が残る企業ほど、投資テーマとしての持続性があります。富士電機やアズビルを高く評価したのは、この二層構造を持つためです。

共通リスクと次に見るべきポイント

最大のリスクは、旺盛な受注がそのまま高収益になると考えてしまうことです。

前提が崩れる条件

  • 政府支援や燃料安で省エネ投資の回収期間が長期化する
  • 部材費と人件費が値上げ効果を上回る
  • データセンターや半導体工場の建設計画が延期される
  • 円高で海外売上・受注の円換算額が減る
  • 大型案件の納期遅延で売上計上が後ろ倒しになる
  • 株価上昇に利益成長が追いつかず、PER調整が起きる

次回決算で確認する順番

  1. 受注高と受注残は前年同期を上回ったか
  2. 売上増に対して営業利益がより大きく伸びたか
  3. 棚卸資産と売掛金が急増していないか
  4. 増産投資後もROIC・ROEを維持できるか
  5. 配当や自社株買いが成長投資と両立しているか

2026年夏は料金支援が企業負担を一時的に和らげます。その後も残るのは、老朽設備の更新、電力網増強、工場の自動化です。次の決算では売上高だけでなく、受注採算、営業利益率、キャッシュフローの3点を並べてください。そこが、電力高を本当に利益機会へ変えられる企業と、テーマ期待だけで買われた企業の分かれ目です。

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